51話 陸上3連王の実力にゃー
「5、4、3、2、1、スタート!ですわ~」
スライの合図に私たちは一斉に走り出した。
距離は3連王の最後【ゴッドスピール】をもとに10800M
このレース場が一周1800Mのため6週回ることになる。
私は再び逃げ作戦で、走り出すのだが……まさか……
(サフィーさんって逃げにゃ!!?待って速すぎるにゃ!!)
(これが……3連王の逃げ……ですの!!?6週あるのですのよ!!)
(スタミナが持ちませんよ……)
(少し気合を入れ過ぎたかな……シャーリンさん相手だからかな……ふふ!楽しみ!どんな走りを見せてくれるのかな~)
このレース会場を6週……明らかこのペースは速いと感じている……以前の私ならばスタミナが持たないだろう……
(前よりも……楽に走れる……スタミナが付いた証にゃね……あとは離されない様に……しっかりと……サフィーさんについていくにゃ)
今までのレースでは感じたことない感覚だった。
前に走っているサフィーさんからは絶対に勝てないオーラみたいなものが見えている……
サフィーさんはまだまだ、本気じゃない。
そういうことが走りながらでも伝わってくる……
さらに後ろを見るとエリとロミがいる、2人の真剣な顔が私でも伝わってくる。
後ろの2人からは絶対に勝つ、というオーラを感じていた。
(皆真剣だね……でも……去年とは言え、3連王の私に勝てるかな?)
(絶対どこかに……勝てる方法はあるにゃ!レースには絶対はないにゃ……トレーニングもたくさん積んだにゃ……)
(さすが、めちゃくちゃ速いですわ……)
(絶対勝ちますよ!せっかく3連王と一緒に走れるのだから!私がサフィーさんに勝って……私の母親に見せ付けて……認めさせます!)
私たちは、離されることなくいよいよ6週目に突入する……私のスタミナはもう限界だった……
しかしサフィーは未だに息の上がっている様子はない……むしろ生き生きしていた。
(さあ!行きますよ!私のスパートについてきなさい!!)
とサフィーがどんどん加速していく……まだ6週目の始まったばかりで、かなり早いラストスパートのかけ方だった
(くっ!!離されないにゃぁ!!)
私も全力で追いかける……アスファルトを蹴る音……それがとても心地良く感じていた。
風は前にサフィーさんが走っているのでそこまで感じない……
(絶対あきらめないにゃ!最後に先頭の風を感じるのは……私にゃ!)
(ちょっと??シャーリン!?何してますの!?)
(完全にサフィーさんの手駒に乗せられましたね……あれだとスタミナが持ちませんよ)
私はそんなことを気にせずくらいついていく……私には最後のスパートがあるのだ。最後に一気に抜かせばいい。そう思っていたのだが……
(ラストのコーナー……ここで!)
しかし加速しない……私はチラッと足を見るも足の動きは変わっていない……いや……明らか遅くなっている。
スタミナの限界が来たのだ。
トレーニングは積んでも、10800Mのレースは初めてなのだ。
かつ無理にサフィーさんについて行った……その弊害というものだろうか……
(シャーリンさん……騙されたね!私の強さは……スパートの長さ!そこまで大きく走れないけど一周まるごとスパートをかけられる!1週分私のスパートについてきたのは褒めるけど……スタミナはどうかな!)
サフィーからどんどん離され、エリとロミとの距離がどんどん縮まってくる……
このままだと確実に私は負ける、それは確信していたのだが……
(でも……ここで諦めたら……サフィーさんが和足のファンということを後悔するにゃ……ここは一回深呼吸にゃ)
私は肩の力を抜くと、走りながら軽く深呼吸をした。
明らかに私からの空気が変わる。
どうやら周りもそのことに気が付いている様子だった。
(……!?この背中からゾクゾク感覚は……)
(シャーリンついに本性を見せましたわね)
(スタミナどうなっていますの!?)
(私だって……ただトレーニングをしていたわけじゃないにゃ!これは個人トレーニングで身に着けた技……にゃけど……1回の深呼吸でスタミナを一時大回復させる技を身に着けたにゃ!)
私は最後の力を振り絞り……右足でアスファルトを蹴り上げる。
ここからはもう無我夢中になって走るだけ、もう周りは気にしない。
気にするのは……目の前のゴールだけ。
「にゃあああ!」
私は腕と足の歩幅……足の回転の速さを注意してサフィーを追いかける。
この時の私は体力なんて考慮せず……息を止めている状態だったのだが、それが功を奏したのか、サフィーとの距離が一気に縮まっていく……
(これがシャーリンさんの加速!思っていたよりも……速い!?)
(さすがですわ!ですが私だって!!)
(負けたくありません!!)
とさらに後ろからエリとロミが私の横に並んでくる……
これで私たち4人が横並びになった。
だが、まだ私は諦めてはおらず……
残り50Mの看板を通過する。
(このまま……駆け抜けるにゃ!!)
「「「「はあああ!!」」」」
4人は横並びになったまま、ゴールを駆け抜けるのだった。
そうして、私たちはしばらくアスファルトの上を歩いていると、そのまま地面に倒れこむ、後ろからミシュとスライが飲み物を持って飛んでくる。
「お疲れ様!皆!」
「凄かったですわ~私が見た限り……全員引き分けでしたわ~」
「はぁ……はあ……とっても疲れたにゃ~もう起き上がれないにゃ」
私は疲れすぎてアスファルトに大の字で寝ている……
どうやらサフィーもエリもロミも同じでアスファルトに寝転がっていた。
まさかここまで、ぎりぎりの接戦になるとは思いもしなかったのだ。
「いやあ!シャーリンさん!楽しかったです!やっぱりすごいですね!」
奥からサフィーが笑いながら歩いてくる。
正直、私はレースの事は真剣であまり覚えていないのだが……最後私と一緒に、サフィーがゴールをしたというところだけは覚えていた。
「シャーリン前よりも速いですわよ!加速」
「ええ、びっくりしました。あのレースの時だと私は完全に負けていましたね」
「にゃはは~トレーニングのおかげだにゃ!」
「じゃあ30分ほど休憩したらMVの撮影するよ~」
「そういえばそれが目的にゃぁ~」
ということで私たちは、次のMV撮影の為いったんその場で休憩することにしたのだった。
これからようやく、MVが撮影できる!そんなことを思うと、私は嬉しくてたまらない……
いいMVが出来ることを信じて、私は毎日を頑張ると決めたのだった。




