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猫の私は異世界に行きましにゃー  作者: 蜂鳥タイト
第1章・第1部 ライブ編
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48話 魚族たちのレース観戦にゃー


 私とフランは看板を見つめる……

一応今からのプログラムならば……11時からのうお1級レースには間に合うだろう……

魚1級レースは水の中で行われるレースで、こちらも陸上1級レースとほぼ変わらず、水中で魚族たちが一斉に競い合うレースだ。


「私このレースを見たいにゃ」

「そ、行ってらっしゃい。私はここで待ってるから」

「一緒に行くにゃ!」

「え!?ちょっと!……まったく」


私はフランの手を握ると引っ張って歩いていく。

そうして私たちは観客席に向かう。


「凄いにゃああ!?」

「はぁ……どうして私まで」


その会場はとても大きく、真ん中には芝と周りにプールがある。

プールの大きさはフランの話だと1周1800Mらしく、ここは陸上レース場と変わらないようだった。

簡単に言うと……レース場のアスファルトが代わりにプールになっているのだ。


「でもこれだと……スタートが出来ないにゃ!」

「黙って見てなさい」

「にゃ?」


フランの言葉に私は前を見る……

しばらくすると何やらブザーが鳴る。

どうやらもう始まるようだったのだが……いつもの陸上と同じようなスタート方法だと、水の中のため、踏み込みが無くなる……


「にゃにゃ!?にゃにか出てきたにゃ!」


なんとスタートラインの上に横から板が出てくるのだ……どうやら飛び込み台が中についているらしく、さらに板の中から、小さな飛び込み台が現れる。

板は水に浸かっておらず、恐らく息継いきつぎ位はできるほど隙間が空いていた。


「にゃにゃ!?あそこからスタートにゃ!?すごいにゃ!」

「出てくるよ、しっかり見てなさい」


『さぁ!始まりました!魚1級レース【ウォーターシュレイム】今回の注目選手は魚3連王目前の、魚族・カジキ類のレニン・フラリエ!この1戦で3連王になれるかどうかが決まります!さて選手の入場です!』


どんどん番号と名前が呼ばれ歩いてくる。

私の前世では覚えている限り、一番早いのはカジキ族だった。

しかしこの世界は前世とは別……つまり。


『次に登場するのは神族のシンラ・ワダツミです!』


「神にゃ!!?」

「神族と言っても本物の神じゃない、神の恩恵を受けて生まれた種族達の事、名前の最後に恩恵を受けた神の名前を付けることになってる。それは天族も同じ」

「つまり……シンラさんの恩恵は……ワダツミってことにゃ?」

「そういうこと」


前世の知識では、、ワダツミと言えば海の女神で海を自在に操る能力があるとか……

もしも、その恩恵をシンラさんが受け継いでいるのならば、レニンさんからしたらかなりの強敵になるだろう。


「レニンさん不利にゃ?」

「シャーリンさん、それをミシュさんにも言えますか?家系だけで不利と決めつけるのはダメ、それはあなたが1番知ってるでしょ」

「ごめんにゃ……」


皆が飛び込み台に立つ。

どうやら番号は私たち側から見て、奥から1番2番となっているらしく……シンラが1番でレニンが10番らしい。


「枠順はレニンが不利」

「なんでわかるにゃ?」

「はぁ……シャーリンさんって、レースの時何も考えてないの?見なさい、あのまま進んだら左に曲がるでしょう?」

「分かったにゃ!つまり外側は不利なんにゃ!」

「そういうこと」


私はレニンの3連王をこの目で見たい……とそんなふうに思っている。

初めての水中レースなのだ、どうなるのかは全く分からない……でもそれが楽しみというところもある。


『それでは皆さん行きますよ!5秒前!』


皆が一斉に準備をする……

正直ここの緊張はよく知っている、私もスタート前のカウントダウンは、今でも逃げ出したくなってくるのだ。


『5!4!3!2!1!スタート!!』


一斉にプールに飛び込んでいく……

真っ先に抜け出したのはシンラだった。どうやら逃げ戦法らしい……問題のレニンはどうやら追い込みで、後ろから3番目を泳いでいる。


「うにゃぁ……シンラさんが速いにゃ……」


フランは黙って見守っている。

そして1個目のコーナーに差し掛かる、不利枠のレニンはなかなかコーナーの内側に入り込めないでいるのだ。


「完全に妨害されています。3連王にさせないためでしょうね」

「そんにゃ……ひどいにゃ!!」

「それが戦略よ、勝つためには手段は選ばない。そんな種族が多いです。そんなの基本ですよ」


私はひたすらレニンに勝ってほしいため、手でずっと拝んでいた。

しかしコーナーでは1人も追い抜かせられなく終わっている。

以前、先頭を泳いでいるのはシンラで、どんどん速度を上げている気がする……でも私はレニンを諦められなかった。


「レースには絶対はない、本人が諦めなければ勝てます」

「にゃ?どういうことにゃ?」

「見てたら分かります」


皆は最終コーナーに差し掛かってきた。ここでレニンが仕掛ける。

なんと猛烈な速度でコーナーの内側を回り、皆の間を抜け、一気に2位まで登ってくる。


(これが諦めない力にゃ……種族も恩恵もすべて……)


いよいよ最終直線になる。シンラが必死に逃げているも、猛烈に追いかけてくるレニンがもう真後ろまで迫っていた。


『レニンとシンラのデッドヒートです!どちらが勝つのかまだ分かりません!レニンが3連王になるのか!それとも、シンラが5連覇を成し遂げるのか!!今!2人が並んでゴールしました!!』


そうほぼ同時にゴールの線をくぐったのだ。

どうやらこの場合はモニター審査になるようで、頭が先に出ている方が勝利となる。


「どっちが勝ったにゃ……」


そのモニターに映し出されていた写真には、なんと、わずか数センチの距離でレニンの頭が、線を超えていたことが映った。


『なんと!!わずかな距離でレニンの勝利!見事40年ぶりの水中3連王に輝きました!そしてこれは……1分43秒!大会レコードです!レニンさんとシンラさんが同時に、大会レコードを更新しました!!』


「凄いにゃ……なんにゃ……今の……」


周りからも歓喜と祝福の声が聞こえてくる。

種族で不利、枠番で不利な状況の中、わずか数センチの距離でレニンが勝ったのだ。

レースには絶対がない、諦めなければどんな不利的状況からでも1位で勝てる。

フランの言っていた意味が、ようやく理解できた気がしたのだ。


「フランさん、私絶対あきらめないにゃ、初めはこの場所に不安もあったにゃ、レースにも澪ミシュさんが本気だったから、私には合わないそう思ってたにゃ。でも、違ったにゃ、レースはとても楽しいにゃ!だから……私も諦めないにゃ!」

「そんなの毎回思うことでしょう?何故今更そんなことを言うのですか?」

「それは……」


その答えは……言えなかった。

いや……言えなかったというよりも、言葉が出てこなかったのだ。

今のレースを見て、私はまだまだ本気でレース……やライブなどに打ち込めていなかった。ということを知ったのだ


「とりあえず帰りましょう。最終日の明日は、別のパフォーマンスを見るのでしょう?」

「そうだにゃ!分かったにゃ!」


ということで、私たちは近くの旅館に入る。

どうやらこのチケットは2日使えるので、明日も気にせず無料で入場できるらしいのだ。

今日は水中族たちのレースを見たため。明日はパフォーマンスを見ることに決めたのだった。。

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