42話 お疲れ様にゃー
私はモニターの前で1位を取ったミシュの表彰祭を泣きながら見ていた‥…
あれだけレースにこだわっていたミシュが1位を取ったのだ……しかも1級レース……レースの中でも最高難易度……最高峰と呼ばれているレースにだ。
「良かったにゃ……本当に……ミシュの……夢がかなったにゃ……」
「まだですわよ、ミシュさんは3連王を目指していますわ!つまり残り2つも1位を取らないといけませんわ!」
「そういえばスライさん……どうしてあの曲がるときにわざわざリングの上近くまで上がったのですか?」
「簡単な話ですわ~90度体が傾いていますから~羽を動かしても左右移動するだけで上下移動はしませんわ~簡単に言えば……氷の上を寝ながら滑っているのと同じですわ~」
「まるでペンギン類ですわね……」
「ペンギンも一応鳥族にゃよ」
私の言葉にロミとエリが目を見開く、どうやら知らなかったらしい……スライはもちろん知っていたのかあまり反応はしなかった。
「そういえばペンギン類とは聞きますが……族の名前は知りませんでしたね……」
「初耳ですわよ!」
「族の名前にゃ……」
私のイメージだと……パラりラパラリラ~うるさいあの族を思い出す……せめて種族と言ってほしいのだが……
「でも……それだと……羽のものすごく負荷がかからないにゃ?あの速度で曲がるということにゃらば……その分まっすぐ進もうとする力が働くにゃよね?」
「確かに私も昔思いっきり走って……曲がり切れずに田んぼに落ちましたわ!」
「それは……ドジではないですか?」
「なんですって!?」
「それはミシュさんの種族類に関係しているかもしれませんわ~」
「種族類にゃ??」
(さっき言っていたペンギン類は鳥族……ということなんだろうか……そのことを合わせて種族類ということにゃ?)
私はしばらく考えているとスライが再び話を始める、
正直私の頭ではここまでが考える限界だった。
「私は蝶族のモンシロ類ですわ~」
「聞いたことありますわ!モンシロ類!かなり羽が白くて綺麗ですわよね!?」
「確かに私も聞いたことはありますが……レースが強いのは知りませんでした……」
「にゃぁ~私も聞いたことあるにゃぁ……」
私がまだご主人様に拾われる前山の中でよく見かけたのだ、
確かに逃げ足は速かったように思える。
「そして何故ミシュさんが耐えられたのかという理由ですわ~ミシュさんは鳥族の中で1番小さい種族類ですわ~」
確かに……ミシュは前世で比べると幼稚園に通っている子と同じくらいなのだ、私もあまり大きくはないが……中学生くらいはある。
「その、ミシュさんの種族類は……ハチドリ類ですわ~」
「ハチドリ……確かにミシュリーさんもミシュさんとあまり背が変わらなかったですね……というか低かったような……」
「そうですわ~ミシュさんはハチドリ類の中でも大きい方ですわ~まぁ……背が低い……しかもものすごく軽いのが特徴ですわ~だからあまり負担を受けていないのですわ~」
「なるほどにゃ!だからミシュしかできない技なのにゃ!」
「ほかの種族類でしようとしたら……羽を骨折しますわ~」
私はその言葉にゾクリとする……必死に練習したとき骨折しなかったのかと急に不安になったのだ。
「あっ!インタビューが始まりますわよ!」
そうここも1級レースならではで、表彰祭のあと1位、2位、3位、の順にインタビューがあるのだ。
ということでミシュたちが上がってくる。
『さあ!見事!1位に輝きました!ミシュさんです!ミシュリーさんを追いかけるように1位になりましたが今の感想はどうですか??』
「そうですね……私はお姉様を超えるために絶対に勝たないといけない、そう思いました。あとは……聞こえたんです、仲間が応援してくれているって……」
「家計才能のだけのやつがいきんなー!」
「「「そうだそうだ!!」」」
「カレンの3連覇が見たかったのに!邪魔しないで!!」
『皆さんインタビュー中ですよ!静かにして下さい!』
「ひどいにゃ!」
「まさか……ここまで……」
「私が鎮圧してあげますわよ!」
「待つのですわ~!エリさん!」
あと少しでエリが飛んでいきそうになるのをスライが引っ張る
ミシュは俯いてその後何も話さなくなってしまった。
『それでは…次は2位のカレンさんです!惜しくも2位でしたがどうでしたか?』
「「「おおお!!」」」
「惜しかったよ!!次頑張って!!」
全然反応が違う……ミシュの家系は……そう最強家系と呼ばれているのだ……
「どうもカレンです、2位……確かに悔しいです……ですが私は才能で負けたとは思っていません。 完全な実力で負けたと思っています。 もしもミシュさんが才能だけで挑んできていたのならば……私は3連覇を成し遂げていました。 私の家系は全員【ブラウター】3連覇を成し遂げています。家系対決ならば私が絶対勝ちます。それでも私は負けました。その理由は何なのか……簡単です、技術力、コーナーの速さ、スパート力、すべての実力がミシュさんよりも劣っていたのです。 だからと言って諦めません、次は実力でミシュさんの実力を破ります。ミシュさんには感謝の意を示したいです、私の実力不足を教えて頂いたのですから」
カレンの言葉にみんなが一斉に黙る。それほどカレンの影響力が強かったのだ。
『次は3位のリンさん!3位という結果でしたが……どうでしたか?』
「私もカレンさんと同じ感想だけど……1つ言わせてもらいます!私はミシュさんの事を、才能でしか勝てない者だと思ってた。でも違った……あれは才能なんかでできる技じゃない……これからはミシュさんは、私たちのライバルであり大切な友達、悪く言うのは許さない……ミシュさん本当に1位おめでとう」
リンとカレンがミシュに手を指し述べる……
「はい……ありがとうございます!」
パチパチ……と小さいが拍手がモニター越しでも聞こえてきた……その拍手は次第に大きくなっていく……
「おめでとー!!ごめんなー!!」
「楽しいレースをありがとうー!!」
ミシュはもう大きな拍手と歓声に包まれるのだった……
その顔は上げることなく微かに涙が落ちていたのを私は見逃さなかった。
「良かったにゃ!!」
「どうなることかと思いましたわよ!」
「恐らく一緒に走った時から……才能だけじゃなく……寛大な努力をしていたことを認めていましたわ~」
「そうみたいですね~ほら……周りがミシュさんに群がって……ミシュさんも笑顔ですね」
「私、帰るにゃ!明日お出迎えにゃ!またにゃ~」
「そうですね、エリ、帰りましょう」
「はいですわ!」
ということで私は部屋に戻る…
あの時の余韻が今でも忘れられなかった……
「シャーリンさんいる?」
「フランさん!ミシュさんが勝ったにゃ!!」
「うるさいです、それが何か」
「にゃううう……」
「それよりもミシュさんに伝言をお願いします」
「にゃにゃ?」
「【1位おめでとう、良いレースだった】と」
「にゃ??」
「それじゃ、私、することあるから」
フランは扉を閉め自分の部屋に入ってしまった……
私は驚きに目を丸くするしかなかったのだ。
(フランが……あんなことを言うにゃんて……)
私は軽く笑うと、明日の為に今日はもう寝ることにするのだった。
明日はきっといい日になるにゃ……
 




