外伝 3ー4ー1話 全員で鬼ごっこ!(前編・ミシュ視点)
「ということで始まったのは良いものの……どうしようかな……」
私はひたすらライブ会場の中を飛び回っている。本来鳥族は建物の中は飛べないため不利なのだが私は小柄の為スイスイと移動できるのだ。
「皆はやはり外かぁ……逃げやすいしそらそうかなぁ……」
ということで私は2階に向かっていく……2階はどうやらライブ会場の正面入り口があるようで、私はゆっくりと入っていく……中は真っ暗でどこに何があるのか全く分からない状態だった。正直ここで逃げようと考えると確実に地面や壁などに激突してしまう。
ということで私はしぶしぶ諦め別の逃げ場所を考えながら飛び始める……
「推しちゃーん!見つけたよー!ってはや!!?」
と後ろからピョリンが走ってくる……私は慌ててその場を飛んで逃げる……運がいいのはこのドームは一周回ることが出来るようで……さらに途中で階段があるためにすぐ別の階へと逃げられる作りになっていた。
「私このドームの中ではもしかして最強??」
(いやいや油断はしてはいけない……たとえ初めが逃げ切れても次逃げ切れるか分からない……)
その考えはごもっともで、外とは違い自由な場所が極端に少ない。つまり行き止まりに引っかかると終わりなのだ。行き止まりには極力近づきたくないため、とりあえず食品コーナーに向かって歩いていくのだった。何故歩いているのかというと、鳥族など空を飛ぶ種族は羽を使って飛ぶのにかなり体力を使うため、いざ逃げるときじゃないと羽が動かなくなるのだ。一応走ってから飛ぶとその分、楽に飛べるというのもある。
一応長距離用に最小限で長く飛べる訓練はしているのだが、速度を上げるにつれて羽を動かす勢いに違いがある。
つまりは短距離の飛び方で長距離は飛べないのだ。
「予想だと20分休憩で大体10分は全力で飛べるかな……さっきの逃げでもう疲れたけど……」
ということで私は結構時間をかけ無事食品コーナーに着く……走るのはかなり遅いし体力も消費するため歩くしかないのだ。私は鳥族用のベンチを見つけるとそこで羽を休ませる。
鳥族用のベンチは椅子の後ろに羽を立てかける棒が設置されており、座ると同時に羽を後ろにぶら下げることが出来るのだ。
空を飛ぶ種族からしたらこの棒はかなり羽を休ませられることができ、すぐに動けるというメリットもある、そして最後に翼骨折などの怪我したときもこの体勢になって安静にしたりもする。
「誰も来ない……まぁこの会場ものすごく広いからそんなものか……悲鳴は聞こえるんだけどなあ……」
私はゆっくりと伸びをしながら起き上がる。正直鬼も誰も来ないとなると暇すぎるのだ。ということでスタート前に言っていたアイテム探しをすることにした。理由は暇ということもあるが、もしかしたらミッションで役に立つかもしれないと思ったからだ。
まずはライブ会場に歩いて向かう……相変わらず真っ暗だがこういうところこそ何かあると私は確信していた……
「というか……これ鬼ごっこじゃなくて宝さがしみたいになってない?」
1人で呟くも返事はない……逆にこれで帰ってきたらそれこそ怖い……ということで私は夢中でアイテム探しを始める……
「まっくらじゃん!推し達~!でておいで~!!」
私は慌てて椅子の下で丸くなる。一応通路には出ていないので見つかることはないと思っていたのだが……ここで緊急事態が起こった。なんと目の前が急に明るくなったのだ、どうやら明るくするスイッチがどこかにあったらしい……
タッタッタ!と足音がしている……
「…………」
私は口を手で押さえて椅子の下に隠れている……羽も見つかるわけにはいかないため後ろに壁がある真ん中の一番後ろ席で横になっていた。
「じゃあこの段~」
いよいよピョリンが私のいる椅子のところまで来る……ここから足がもう間近に見えていた……
(ピョリンさんの足って結構きれいなんだなあ……いやいや……何言ってるの私…‥)
「これは!!」
私はビクッと体を震わせる……まだ開始してから30分ほどし当たっていないように感じたためここでつかまるのはさすがにダメだと思ったのだ。
しかし前にはピョリンの足……私はいきなり逃げれない絶体絶命のピンチに陥っていたのだ。
「これが青ボール~確かにここに落ちてたら誰にも見つけられないよね~さ~推し達はどこかな~」
とピョリンが再び跳ねながら走っていった。
扉の閉まる音が鳴りライブ会場は再び暗転する……
「ぷはあ!終わったかと思った……顔ちらって見えた……そして確か……」
私は転がり椅子から出るとピョリンが触っていた場所を手で探る……
すると何やら円形の物が触れた気がした。何やらボール??みたいなものらしいがまったく見えなかった。
「とりあえず……廊下に……」
私はライブ次回上のドアをゆっくりと開け誰もいないことを確認した後、3階に向かう。
3階はショッピングモールになっており隠れるところは多いのだ。
「これは青ボール??何に使うのだろう……」
私は一個だけ手にしている青ボールの使い道をその時はまだ全然知らなかった。
……が見つけたからには何かあるんだと考えそのボールはポケットに入れ保管することにしたのだ。
そうして再び食品コーナーに戻ると何やら袋が置かれており悩んだ後、放送がかかる。
「なるほど!これを持って逃げろと……まぁいいか!いただきまーす」
私は1つ無造作に選ぶとそのままベンチ近くまで飛んでいった。
そうして私はベンチに座る、正直鬼は全く来なくてあっという間に昼休憩に入っていくのだった。




