13話 思い知った覚悟の無さ(ミシュ視点)
私はずっとベットで眠っている。起きる気力もわかなかった。
いっそこのまま学校も休んでしまえばいいかとも思っていた。
「ミシュさんもう学校ですよ~」
「いい、放っておいて」
「あらあら~シャーリンさんが悲しみますよ~あの時も一番応援していたのですから~」
「……」
「まぁまた元気出てから~来たらいいと思いますわ~それでは~」
(勝てなかった……お姉さんが怪我した代わりに私が走るって……決めたのに……なんで……今回のレースは勝たないといけなかったのに……鳥1級3連王になるためにはもう時間がないのに……)
鳥1級3連王というのは鳥1級レース【ブラウター】【カバウム】【ヒューリンガースカイ】の3レースを連続で1位を取るともらえる称号でさらにこのレースは1年に1回しかない特別なレースなのだ。
(私のお姉ちゃんはヒューリングスカイで怪我をし1級3連王を逃した……だから私がお母さんの代わりに1級3連王にならないといけなかったのに……こんな初戦1級レースでしかも最下位って……何してるんだろう……あの時練習できなかった……たったそれだけで……勝てなくなってしまうものなの……そんなことない……だって私のお姉ちゃんは……ちょっと練習を休んだくらいで負けることなんてなかった……)
私はゆっくりとベッドから起き上がると、持ってきた映像用の魔力石をモニターの上に置く、各部屋にはモニターがついており、生徒カードや、身分証明カードで使えるようになるのだ。
『さぁ!始まりました!2090年3月8日の鳥1級レース【ヒューリンガースカイ】なんといっても今回の目玉は2級鳥族のミシュリ―!このレースを見ている観客たちも10年ぶりの鳥1級3連王が現れると信じ見守っています!!』
モニターに当時の映像が流れる。
これは、昔伝説世代、と呼ばれていた私の姉が挑んだ、3連王最後のレース【ヒューリンガースカイ】の映像である。
『さあ!23人の鳥族が一斉に空へ飛び立ちます!おっと!ここでやはり前に出るのはマーリ―!なんという逃げだ!どんどんと前方に飛んでいく!『ヒューリンガースカイ』は5000M×2の10KMあります!このペースで持つのでしょうか!おっと!いきなりミシュリーが仕掛けて先頭に立ちました!!』
私は当時目を見開いて応援していた。1級2連王のお姉ちゃんが2位と圧倒的な差を開き1位で飛んでいるのだ、私はここから負けるはずないと思っていた。恐らく私以外にも1級3連王の誕生を確信していた人が多いだろう。
『さあ!残り2500Mを切りました!2位との差はなんと約50分以上!!凄い!凄い鳥族だぞミシュリ―!さすが最強の一角に名高い……っとどうしたのか!?ミシュリ―がバランスを崩した!!そしてそのまま落下していきます!羽の故障です!!なんと残り1000Mを切ったところで羽の故障が発生した模様です!!ミシュリ―立て直すことが出来ない!!そうして海に落ちていきました!!大丈夫でしょうか!!?』
「……か?……大丈夫ですか~?」
私ははっと後ろを振り返るとそこにはスライが心配そうな顔で見つめていた。
どうやらモニターを付けたまま、眠ってしまったらしい。
「連れ出しに来たの?」
「もう終わりましたよ~私もこのレースは見ていましたわ~2090年の【ヒューリンガースカイ】ミシュリ―さんはあなたのお姉さんだったのですね~」
「……」
私は下を向いていた。何も言うことが出来なかったから。才能の塊でここまで来たのに結局才能だけじゃどうにもすることが出来なかったってことに……
努力さえしてればこんなことなかったと。
「努力さえしていれば……あんなことしなければ……勝ててたのに……」
「でしたら~これからがんばってください~これであなたのお姉さんと同じスタートなのですから~」
「どういうこと?」
「会長から聞きましたわ~ミシュリ―さんも問題起こして練習できずに『フライングロード』最下位でしたと言っていましたわ~「さすが姉妹の血筋だな」とも~」
「うそ……そんなこと何も……」
「実の妹にそんなこと言えるはずもありませんわ~でもそこから練習頑張って最強の座に就いたといっていましたわ~。あの3年前の伝説最強5世代ですわね~、飛行最速を出し鳥1級2連王のミシュリーさん、鳥1級レース最難関『フェーラー』10連覇達成のレミンさん、そして陸上1級レース全制覇の生徒会長のシュレーヌさん、そして陸上最速記録を出し、陸上1級3連王になったヴィラ―さん……そして最後……今はなくなったレースの1つ長距離……鳥1級レース『バイタリオン』120KMレースをわずか半時間の見事1位となって帰ってきたミーさん。このすべて記録は一生出ないといわれていますわ~」
私も聞いたことがある名前だった。今ではも2種族、活動休止しているが、この時は【最高の世代】もしくは【伝説の世代】とも言われていたほどだった。
正直この5人がいなければ今のレース……今の盛り上がりはないといっていいだろう。
「でも私から厳しい言葉で言うとですね~」
「なに?」
「たった1つの負けでそこまで落ち込むならばレースにはもう出ない方がいいですわ~周りは一生懸命している人がいるんです~たった1つの負けではそうそう落ち込みませんわ~じっくり考えて答えを出してくださいませ~」
スライが真剣な顔で私の顔を見ていた。ロミやエリの言い方だと普段は温厚で真剣なことはめったに言わないんだろうということは思っていたが……実際そんな人から言われたことはなかった。
(いや……そうじゃない……私何悩んでいたんだろ……答えは簡単じゃない……努力すればいい……だったらこれから……頑張ればいいんじゃない!やってやりますよ……お姉ちゃん私はお姉ちゃんを超えますから)
「ちょっと待っててください」
私はスライの方を向くとすぐに飛び出していった。
このままではいけない……
私は今まで努力というものをしてこなかった、それが今の私の敗北というならば……
絶対にトレーニングして1位になってやる!
そう心に決めて。
「あらあら~ふふっ、頑張ってくださいませ~」
スライは笑いながら自分のベッドに横になる。
私はその後会長にお願いし2か月後にある鳥1級レース【ブラウター】に出場することを決意したのだった。




