124話 記憶の保管庫にゃー
いよいよ最後の日がやってきた。
これですべてが終わる。
記憶の戻ったミレーに勝ちさえすればこの無限時間は解除される……
「頑張るにゃ!!」
「あまり気を詰めるとレースに支障出るから気にし過ぎないことね。それとこれ持って行きなさい」
「にゃにゃ??出場種族交代券?」
「一応、使えるかもしれないから使わなかったら別にいい」
「分かったにゃ!」
私はフランに一礼するとそのままレース会場に走っていった。
ここで変わってくると思えば姉との会話だろう……
アテナ曰く、今日までの記憶、記録がすべてがリセットされているらしい……つまり今日が本当の2月23日……今までの事を覚えているのはこのループに気が付いた一部の種族と被害にあったミレー達だそうで……
そうして私はレース会場に着く。
私は早速変わったことが無いかどうか見に行くことにする。
「あれは……ミレーにゃ!」
私は目の前に歩いているミレーを見つける。
いつもよりもかなり早めに到着したのだが……
いったいどうしたのだろうか……
「ミレーにゃー!」
「あれ?私ですか??どうして私の名前を?」
「??私にゃシャーリンにゃ!ミレーは覚えてるにゃよね?」
「いえ……私は何も……」
「にゃにゃ!?覚えてないにゃ!?姉の事も!?」
「姉??私は一人っ子ですけど……」
(どういうことにゃ!!?記憶が今までのすべて忘れられてるにゃ!)
私はゆっくりと歩いていくミレーを見る。
だけど名前を聞いて返事をしたということで記憶喪失というわけではないらしい……
「にゃはは……そうだったんにゃね……と……とりあえず一緒に話すにゃ、早く着き過ぎてこれから暇なんにゃよね」
「う……うんよろしく……」
ということで、私たちは皆がそろう時間まで話すことにした。
とはいってもみんなが集まる時間を知っているのは、恐らく私だけだろう
記憶が残っていたならば私の友達……ライバルが来るのを知らないはず……
「でも何でレースに出場するにゃ?」
「何でって……それはもちろん……」
「にゃにゃ!?」
私は言葉に詰まったミレーの方を見る。
ミレーは頭を抱えながら下を向いている。
そういえばそうで、今までのミレーは、エリという大好きな姉と一緒に走りたいという思いでレースに出ていた。つまり今エリの記憶が無くなってしまったことにより困惑しているのだろう。
「何で……レースに出てるのかな……私、楽しく過ごせればそれでいいと思っていたのに……どうして……」
「にゃにゃ!!落ち着いてにゃ!きっとレースに出ればわかるにゃ!」
結局、ミレーの出場辞退ということは避けられたのだが……
1つ気になることがあった。
私は隣で無言になって歩いているミレーを見ている。
(おそらくミレーは記憶を塗り替えられたにゃ……恐らく……それで塗り替えられた記憶のせいで昔の記憶は記憶の箱の中に入ってそのまま鍵がかかったんだにゃ……、それで、アテナさんに捕まった瞬間、能力が解除されて改造された記憶は消えてしまったにゃ……つまり……前の記憶は恐らく記憶の倉庫に閉じ込められてしまったままになってしまったんだにゃ……記憶を戻す鍵を見つけないと……記憶は戻らないにゃ……)
私はちょっとだけ考える……いや……もう結論は出ているのだけど……
フランはこのことに初めから気が付いていたのだろうか。
しばらく歩いているとエリたちが手を振っているのが見えた。
「エリにゃ!」
「シャーリン!ミレー!ガンバですわ!」
「何故、あなたも……私の名前……怖いよ……」
「ちょ……待ってくださいで諏訪!」私はエリですわ!」
ミレーは結局そのまま泣きながら走っていってしまった。
私は呆気にとられているエリを見る。
その目には悲しさと怒り寂しさが見えていた。
「エリ、これを使うにゃ」
「これって……出場種族交換券……でもシャーリンさんいいのですか?今までおpレースはすべて無効化……つまりまた1から2級レースを出ないといけないことになるんですよ?」
「別にいいにゃロミにゃん、今のミレーの昔の記憶は今記憶の保管庫にあるにゃ」
「記憶の保管庫って何ー?」
セレナが首を傾げながら聞いてくる。
正直私も今考えて作った言葉なのだが……
この世界には恐らく記憶とは何かということを知らない……
つまり……
「記憶は頭の中に時間とともに上書き保存されていくされる見えない物にゃ。でもにゃ?それでも上書きされる前の記憶はちゃんと頭に保存されているにゃ」
「わかった!その記憶を戻したらいいってこと!?」
まさかセレナが正解を言い当てるとは思わなかった。
まぁ……よくよく考えれば誰だってそこまでは行きつくのだけど……
「問題はその方法にゃ、閉ざされた記憶は2パターンによって復活するにゃ。つまり『思い出した!』この現象にゃ」
「ふむふむ……なるほどですわ。バカな私でも良く分かりますわよ」
「認めましたね」
「うるさいですわよ!ロミ!!」
「そうにゃ!大体思い出す時と言えば無意識にたまに見る夢。そして実際に見て印象が強かった出来事にゃ」
「夢……実際に見る……」
「でもそれだと私に変わる必要ありませんわよ?」
もちろんその返しもエリならばされると思っていた。
ここからが本番。
エリじゃなければできない事……
「ミレーはエリの事が大好きにゃ」
「はっきり言わないでくれますの!?」
「だからこそエリじゃないとダメなんにゃ。私が出たところで、焚火に湿った木材を入れているようなものにゃ。だから」
「なるほど理解しました。つまりはエリのような……初めから頭おかしいほど燃えている乾いた木材を放り込めばよりいいということですか……」
「ロミ!一体その言い方はなんですのよ!!」
「言い方はともかくそういうことにゃ!これはエリにし出来ない……重要な役割なんだにゃ!私ならば大丈夫にゃ!」
その後、私とエリはレース開催委員会に紙を見せ特別に私からエリへと出場変更したのだった。
「待ってなさいミレー……私が必ず思いださせてあげますわ」
エリはそういうとそのままスタート会場まで歩いていくのだった。




