117話 陸上2級レース本番にゃー
「起きなさい、シャーリン」
「んにゃあ!?忘れてたにゃ!」
「レースの時間ですよ」
私はフランに起こされ、目を覚ます。
カレンダーを見ると、今日は2月23日で、2級レース本番の日なのだ。
そうして慌てて準備をし、レース会場へ走っていった。
今回私が1級レース前の試験として挑む2級レースは、陸上2級レース【パラビューラー】一級レースである【エレベスタリオン】と全く同じ距離でトラックは砂である。
私はゆっくりと廊下を歩いていく……
しばらく歩いていると何やら話声が聞こえてきた。
「いい?絶対あなたならできるわ」
「分かりましたお姉様」
「良いわ行ってらっしゃい」
「にゃにゃ?」
私は何のことかわからないがそのまま歩いていく。
「シャーリン頑張ですわ!」
「頑張ってください」
「ファイト―!」
しばらく進んだ廊下の奥にはエリ、ロミ、セレナが手を振っている。
私は元気よく片手を挙げると、そのままスタート地点へと向かっていった。
せっかくの1級レースへの挑戦をかけたレース……ここで止まる訳にはいかない。
「んにゃー!!やるにゃよー!」
私は両手を上にあげ伸びをした後、再び正面を向く。
ひたすら個人練習をした成果を見せるときが来たのだ。
『それではまいります!』
アナウンスが入り、私はスタートの構えをとる。
すーっと息を吸い、目を閉じカウントダウンを聞く。
ミシュリーの勘違いがあってから、レースでもアナウンスでスタートを言うようになったのだ。
『5、4、3、2、1スタート!!』
私は完ぺきなタイミングで前へと抜ける。
【極逃げ】
それはあの【神速のスターリ―】であるスライの戦術。
【大逃げ】よりもさらに突き放して勝つ……
最高難易度級の戦術であるのだが……
「にゃにゃ!?」
いきなり左から、先ほど話していた子が、私の前にやってきたのだ。
どうやら私の【極逃げ】を阻止しに来たらしい……
しかしこの子は一番端からのスタートだったはず……
私の速度を知ってて合わせてきたのだろうか……
なんとかして躱そうにもなかなか抜けない……
(完璧にマークされてるにゃね……だったらこれでどうにゃ!)
と私は右に一気に抜けようとして……もちろん前の子も私を追って右に寄ってくる……
私が考えたのはフェイント、つまり。
「ここにゃ!」
「!?」
私は片足で一瞬硬直すると、そのまま左前に飛ぶように移動する。
これで右に体重をかけていた前の子は抜けるはず……
「んにゃ!?」
私は一気に減速する……
目の前にあの子の背中があるのだ。
しかも前の子は、一度も私の方を見ていない。
まるで見透かされていたかのように、私の前にいるのだ。
フェイントも効かないとなると私に勝ち目はない……
しかし、諦めるのは絶対にしたくない。
「負けないにゃ!」
私は再びフェイントに挑戦する。
正直砂場なので足が滑っているのだが気にしない、抜けるまでフェイントをかけ続けばいいのだ。
何とかして1番前に行かないといけない……
しかしすべてのフェイントも防がれる……
未来予知なのか、それともただの運なのか……
残り100Mを切っている……
足はまだ全然動く……スタミナもパワーも全然ある……なのに全然抜けない。
こうなったら……
(行くしかないにゃね)
私はスパートをかける。
本来3級以下レースならば、50M以内じゃないとスパートをかけていないのだが、今回は対策されてきた可能性があるので、100Mでスパートをかける……
ここでのスパートは初めての為、対策しようも無い。
しかし、前の子には、私がここでスパートをかけるのを知っていたのか、前の子もスパートをかけている。
「くっ!何でにゃ……何でここまで……私のしたいことが全部バレてるにゃ!?」
私は足を必死に動かし、左右に振れ抜かそうとするも、すべてバレているのか前には背中しか見えない。
結局そのままゴールを通過し、私は2位という結果に終わってしまった。
(納得いかないにゃ……にゃんで……)
まぁ、何がともあれ1位の種族には、敬意を洗わないといけないので、手を握りありがとうとは伝えておいた。
感情がぐちゃぐちゃになっている。
何故ここまで、私の思いがぐちゃぐちゃになっているのか分からない。
でも……ただただ悔しい。
私が寮の部屋に戻ると、前にはフランが座っている。
何か話したいことがあるのだろうか……
「フランどうしたにゃ?みんにゃは?」
「寝てるわ、それよりレースお疲れ様」
「にゃはは……負けたにゃね」
「それで話があるのだけど……あなた前にもあの子と走った?」
「いや、今回が初めてにゃよ?名前も知らないにゃ」
「あの子はミレー・ウラン、ウラン家の5女」
「ウラン家と言ったら……」
「エリの元家系でエリの妹ね」
「そうにゃよね……でもなんか変だったにゃ、私の戦術が全部バレていたにゃ……」
「私も良く分からないけど、あなたのフェイントはうまいと思ったわ。問題は、なぜあなたのフェイントに彼女が対応できたのか……彼女の実力表を見ても……あなたに勝てるとは思えない」
「それは可哀想にゃ……もしかして【未来予知】にゃ?」
「あり得ないわね、本来【未来予知】は熾天使族しか持たないといわれている伝説の能力。熾天使族はこの世界の頂点に君臨して、均衡を守ってる立場よ、レースになんて出ないわ」
「良く分からないにゃ……」
「とりあえず私はここで寝るわ」
「んにゃ?この部屋で?」
「それしかないでしょう?ほかにここを指すところがどこにあるのよ。私は床でいいわ」
「んにゃあ分かったにゃ」
とフランが地面に横になる。
絨毯があるため寝れることは出来るのだ。
フランには何か思いついたことがあるのか……
結局何も分からないまま、私も布団にもぐりこんだ。
シャーリン: それにしてもあの子凄かったにゃ……あ!みんにゃ!お久しぶりにゃね!これからも【猫の私は異世界に行きましにゃー】をよろしくにゃ!!




