102話 スタートの練習にゃー ①
ということで、ロミのスタート練習が始まった。
「スタートするときに大事なのは、下げている方の足を思いっきり前に出すことです。誰よりも早く前に出ないといけません」
「長距離でもそうなんにゃ?」
「レース戦術で変わりますが、基本は下げている方の足を思いっきり蹴って前に出ようとすることが大事です。それを意識すれば、出遅れることはありませんよ」
「にゃるほどお……」
「仕方ないですわね……ロミの指導受けて差し上げようじゃないですの!」
「エリには教えなくて結構なんですね、分かりました」
「何でそうなるのです!?」
そんな喧嘩もしばしば見られたのだが、まぁ……いつも通りに戻ったということで、少しだけ安心する。
そうして練習を始め、もう1時間が立とうとしていた。
私はロミに言われた通り、一気に前に飛び出す。
逃げ作戦では、いかに早く前に出て、突き放すかが、勝負の分かれ目になってくるので、結構スタートは大事なのだ。
その一方でエリは、スタートは出来ているものの、結構後ろから追い抜かす、追い込み戦法なので、私とは全く違う。
「別に後ろから行くならばスタートなんてどうでもよくありませんの?」
「ではエリ、あなたは5M遅れてからスタートしなさい」
「無理に決まってますわよ!」
「そういうことですよ、いくら一番後ろだからって、出遅れたら致命傷になります」
「確かにそれは分かるにゃね……」
「なになに?スタートの練習?私たちでよければ一緒にしようか?」
「君たち【シャースミミリン】だよね?以後よろしく」
「俺達もスタートは初め苦戦したよなぁ、あはは」
後ろから私たちに声をかけてくれる3人組がいた。
どこかで見たことあるような……ないような……
私たちが首を傾げていると、3人は思いついたように答える。
「そっか実際に話すのは初めてだもんね、初めまして!私ウマ族、ウマ類のミリン・シュリ―」
「私はサイ族、サイ類のミン・ソージャー。これでも一応先輩」
「俺はオーガ族、オーガ類のミレ・エレトロアだよろしく」
「うにゃああ!?あの時の!?」
「え!?シャーリンご存じなんですの!?」
「意外です……テレビで見たことはありましたが……先輩とは時間が合わないですから……」
そう、この3種族と言えば……私が一番初めにこの世界で、ミシュと一緒に見たレースがこの3人の勝負で、この3種族のおかげで、今の私がいると言っても過言ではないのだ。
「俺たちを知ってたか~どこかでレースを見たのかな?」
「そうにゃ!1年前に3人で走っているのを見たにゃ!」
「1年前と言えば……あ~あの時かな?」
「あの時は確かにすごかった。私初めて勝ったから」
「あの時はやられたね、私の戦術ミスというか……出遅れたね」
「俺もスタートで躓いたしな、……いやあ悔やまれた」
「あの試合そんなことがあったのですね……」
「でもそんなふうには見えませんでしたわよ?」
「確かに2人共いいスタート切ってたと思うにゃ」
確かに私から見た2人のスタートはとても完ぺきなもので、躓いた動作なんてどこにもなかったように見えたのだが……
どうやら3人からしたら何かが違うらしい。
「スタートというのは、レースの中でも順位を左右する一番大切な事なんだよね」
「そうだな、わずか0.1秒出遅れるだけでも順位が落ちる。1級以上のレースに出るならば、特にスタートは基本だな」
「ちなみにこの中でスタート上手いのは私」
「ミンはスタート失敗したことないからな、スタートで失敗するとまずミンには勝てない」
「私も初めは苦労したねスタートは」
どうやら、私たちが思っている以上にスタートは重要な事らしい。
ロミも色々勉強になっているのか、うんうん頷いている。
「だから、とりあえず私がスタート時に意識してることを伝える。あとこの中で追い込みがいたらそのことについても教えられる」
「俺は差し込みについて教えられるぞ!」
「私は逃げね、逃げならばこのミリン姉さんに任せなさい!」
「私たちはそれぞれ追い込み、差し込み、逃げにゃね、個別指導してもらえるにゃらしてほしいにゃ」
と言うことで、とりあえずは個別指導の前に、ミンさんからスタートの基本を教えてもらうことにした。
「まずスタートの基本は【フライングぎりぎりで飛び出すこと】」
「どいうことですの?」
「つまりはスタートとほぼ同時に出るということですか?」
「なんだか難しそうにゃ」
「実際にやってみよう、ミリンスタートの合図をお願い。皆は私の横に並んで、いつも通りしてくれたらいいから」
「了解!」
「「「はい!」」」
ということで、私たちはミンの横に並ぶと、横でミリンが手を挙げる。
実際スタートだけの練習は初めてだから、少し緊張する。
「それでは行きます!3、2、1!」
私はミリンが腕が下がるのを見て……
ちょうど下向きになったところを見計らってスタートする。
「よし!うにゃ!?」
私は完ぺきなタイミングスタートをかけたはずなのに、ミンは私の先を走っていた。
ロミとエリは出遅れたのか私の後ろを走っている。
「今のはフライングでは!?」
エリが目を丸くしている。
私は集中していたのでいつミンがスタートしたのか分かっていない……
「今くらいじゃないとダメ、あなたたちは遅すぎる。カウントは何のためにあるのか考えた?1の後からはもうスタートしていい。ただし、1のカウントから約0・5秒はあけないといけない。フライングになる」
「俺が一応図っておいたぞ、ミンがカウントの1からスタートした時間は……0・55秒だ」
「つまり、ギリギリフライングになっていない……?」
「私が負けたときは0・6秒」
「俺が負けたときは躓いたから0・8秒だった……いやぁ……かなり出遅れた……」
それでもおかしい……フライング基準から3人とも約0・3秒しか遅れてないということなのだ。
私たちのスタートは恐らく2秒から3秒以上遅れている。
第1級レースを制するには、0.2秒遅れまで詰めないといけないということなのだ。
「まぁ……焦ることはないと思う。今日で私がスタートを完璧に教えてあげる。基礎は文句ない。あとはタイムを縮めるだけだから」
「「「はい!!」」」
ということでスタートの練習はまだまだ続くのだった。
シャーリン: 今回の102話どうだったかにゃ?いやぁ……まさかあの3種族達が先生になって教えてくれると思わなかったにゃ!実際のスタートを見て、追い込みの人に逃げの私が初めから負けていたんにゃ……でもこれから巻き返すにゃよ!ということで!これからも【猫の私は異世界に行きましにゃー】をよろしくお願いいたしますにゃー




