86話 猛吹雪にゃー
しばらくの沈黙が流れる。
まさか私がここの世界の種族ではないと初めから見抜いていたようで……
「わ……私は普通の猫族にゃよ」
「へぇ……そう。でも初めてレースしたとき2位になってたけど、あれは何故?」
「何故……?」
「エリとロミはあのように見えて、陸上最強と呼ばれていました。その方たちに2位まで食い込んできた。それだけでも普通おかしい話」
「隠れて練習していたにゃ」
「この国は鳥族含む無数の夜好きの種族もいます、隠れて練習したところでバレます。それに私調べましたが……あなたの名前はあのレース時以降しか記載がなかったらしいですが」
「それは別の国に……」
「別の国にもレースというものがあることも私は知ってる。レースも知らない種族が何故エリとロミに勝てるのか」
私は言葉が出ない、まさかここまでフランが私の事を疑っていたとは思ってもいなかったのだ。
確かに、この世界で名前が広まり始めたのは、私がレースに出て2位になってからで、フランはそこに違和感を感じ調べたらしい。
「あの初見のレースであの2人に勝てるとするならば、元々別のレースの無い世界で、鍛えていた。もしくは存在をひたすら隠し続けてバレない時間をしっかり調べて練習をしていたかの二択」
「後半にゃ」
「本気で言ってる?私たちにも嘘をつけないあなたが皆に……なおかつ女王様に内緒で存在を隠し通せるの?」
「にゃうう……」
どうやらフランはもう完璧に私のことがバレているらしい。
だからこそ、このような意地の悪い質問をしてきているに違いない。
ここで言い訳をしていても埒が明かないので、もう吹っ切れることにした。
「そうにゃ、私はこの世界の種族じゃないにゃ」
「シャーリン!!吹雪だよ!吹雪!!」
「うにゃああ!?」
と扉を開けて入ってきたのはミシュだった。
気が付けばもう視界が見えなくなるくらい雪が強くなっている。
「ところで何の話をしていたの?」
「シャーリンが」
(フランにばらされてしまうにゃ……もうこれで私の人生終わりにゃ!!)
「シャーリンが雪の中に埋まったらどうなるにゃ?って聞いてきたので試したらどうですか?と言っていたところです」
「にゃ……?にゃはは!!そうにゃそうにゃ!」
「……?あはは!シャーリンもボケが下手なんだね!」
「わたしなんて綺麗なボケをかませますわよ。えっへん!」
「エリはボケではなくただの天然バカです」
「騒がしくなりましたわ~」
とスライが仕切ってある扉を後ろに持って行く。
私はフランがすべて暴露する者かと思っていたのだが、なんと黙っていてくれるらしい。
地味に優しいところがあるのがフランという者なのだ。
正直あの言い方は、ロミには不審に思われるだろうが……ミシュが聞いてきてくれたので、なんとか助かった。
「フラン……」
「言っても別に私にメリットありませんし」
「ありがとにゃ」
そんなことを話しているうちに、かすかに陸地が見えてきた。
どうやらかなり積もっているそうで、このままいくと滑り落ちてしまう。
「とりあえずこのまま乗り上げるにゃよ!!」
私は車輪を通常状態へと戻す。
通常車輪でも摩擦があるので前に進むことは出来る。
この状態にしないと上陸した際に、壊れてしまう恐れがあるのだ。
ということで私は、速度を保ちつつ、前車輪だけ岸に乗り上げる。
「到着ですわ!」
「でもこのままだと雪で滑り落ちますよ!」
「大丈夫にゃ!」
と私は雪上モードのボタンを押す。
すると、車輪からそんなに鋭くはないが棘が生えてきた。
これで突き刺して進む仕様らしい。
私も前回見せてもらったが使うのは初めてだ、
「行くにゃよ!!」
私はゆっくりとアクセルを踏んで行く。
前車輪が回転し始めると、車体事騎士に乗り上げる。
後ろもどうやら変わっているようなので、乗り上げてからは一気に進んだ。
「正直、前に誰かがいたら大変にゃ」
「八つ裂きにされますわ~」
「ちょっと怖いんだけど!?」
「ミシュ、うるさい」
「フランは変わらないですね……」
ということで私たちはいよいよ、温泉宿屋のある島へとたどり着いた。
どうやらマージュ国というのは小さな島国で、前世で言うところの県??ほどの大きさしかないらしい島が、10個ほど横に連なっている作りになっているらしい。
この運搬車は魔力車なので、楽をして渡れるのだが、もしもこれが手漕ぎ船と考えると恐ろしいことになる。
この世界では手漕ぎ船が主な移動手段の為、3時間でつくところを8時間ほどかかってしまうのだ。
あくまでも一般の方という話ではあるけど……
「凄い猛吹雪にゃ……」
「前が見えませんわね」
「このままいくと危険でしょ」
「フランに賛成です……少し休憩した方が良いと思います」
「私はなんでもいいよー!」
「操縦者に任せますわ~」
正直私もこのまま進んで建物を破壊してしまえば元も子もないので、今回は運搬車の中で寝泊まりすることにしたのだった。
いわゆる車中泊である。
まぁ……この運搬車があまりにも広いため、寝るくらいのスペースはあるのだが……というかこの操縦スペース自体横10M×縦5M×縦3Mで、1つの部屋くらいのかなり巨大サイズとなっている。
というかもはや動く家と言っても過言ではない。
とりあえず私たちはこれからこの猛吹雪をしのぐためにもゆっくり休むことにしたのだった。
シャーリン:今回は結構危なかったにゃね!フランが優しくて助かったにゃ!それでは皆さん!次の話でお会いしましょうにゃ!またにゃー!
フラン :何か言った?何か聞こえたけど。
シャーリン:にゃんでもにゃい!!急に現れにゃいでほしいにゃぁ……びっくりするにゃ
フラン :……??私は普通に散歩してたら声が聞こえてきただけだけど
シャーリン:にゃうう……
フラン :次の話はあの人達が登場予定、是非見なさい
シャーリン:そんな言い方にゃと見てくれないにゃよ!
フラン :別に私の性格知ってるからいいでしょ
シャーリン:それとは別にゃ!
フラン :そう……じゃあ…… みんなー!!次の話もさいっこうにしてあげるねー!
シャーリン:いつものフランでいいにゃああ!!
フラン :ふっ




