80話 すべてを失いましたわ(エリ視点)
「この悪虐令嬢!出ていきなさい!こんな子……私の娘ではないわ!」
「おかあちゃん怖いよう!!」
そういわれて私はわずか6歳で家紋を追放された。
無論手続きも済ませており、私は完全な下級平民まで落ちたのだ。
私エリ・ウランはこの時からウランの名を捨てることになる、そこからレースというものと出会って……
今、私はこの学園にいる。
それなのに……
私は1通の手紙を握りしめている。
『お久しぶりね我が娘。元気にしているかしら?そうそう、あなたすレースで勝ち続けているらしいじゃない?お金も溜めているでしょう?あなたのお金はすべて私が預かるってことにしたから、今すぐ私の所に来なさいね?もちろん嫌と言ったら、あなたの友達がどうなるかわかってるわよね?あとは、あなたのお姉様を通わせることにしたから、あなたは邪魔なので自主退学してねよろしく~!そうしたら害は与えないから』
といった正直最低な内容だった。
しかし、手続きをしてしまって全くの下級平民となってしまった私には、貴族の言うことは絶対……それはたとえ親であろうとも。
正直私には怒りしかない、私からすべてを奪った挙句この仕打ち。
悪虐令嬢……そう呼ばれたのは私が3歳の頃で……
「お母さん!私にもちょっと、お菓子ちょうだい!」
「お母さま!絶対私の方が良いですよ!この子おかし食べてませんから!嘘をつくのが上手なんです」
「違うもん!お姉ちゃん毎日私が買ってきたお菓子食べてるからじゃん!」
「こらエリ!あなたはお姉さんより立場が下なんだから口答えは行けません!そうですね……確かにエリはお菓子を食べないわね……じゃあお姉さんにあげます」
「わたしだって……お菓子……」
「ありがとうございます!お母さま!」
とかいう毎日で、もう正直うんざりしていた。
つまり私は家族全員から嫌われていたのだ、私の事は目もくれず、親はお姉さんのことばかり、私は1人で遊ぶしかなかった。
そうして4歳の頃……
「ねぇねぇ!一緒に遊ぼ!」
「なに?」
「怖い……うわああん!」
私はついつい睨んでしまい、女の子を泣かせてしまったのだ。
でも正直、当時の私はそんなもの気にしていない、むしろ嫌われて結構とずっと思っていた。
パシーン!と私の頬が叩かれる。
「女の子を泣かすなんて!見なさい!怪我してるではないの!」
(怪我……?何で?私睨んだだけだよね?)
「あなたの子が私に娘に石を投げて怪我をさせたんですよ?どう責任取ってくれるのですか?」
「それなら私の所もそうです!」
「ちが……私は……」
「エリは黙りなさい!」
と結局全部私のせいになったのだ。
正直この時の私はかなり壊れていたと思う……
私はそこから他人のことが大嫌いになった。
やってもないことを散々に言われ、散々殴られ、お姉さんからも悪口を言われ。
そうしてそこの世帯の人たちからは私の事はこういわれた。
【悪虐令嬢】
そうして私はついに5歳の頃友達がいなくなってしまった。
唯一残っていた友達も、お姉さんから私が前に人を殴ったと捏造話を言って離れていった。
「こんな家族なんて……大嫌いですわ!悪虐令嬢?いいですわ……だったらそうなりますわよ!ふざけるんじゃないですわ!」
そうして私は暴れた。ひたすらひたすら心の叫ぶままに。泣きながら……
壁を蹴り、高級な壺を破壊し、窓ガラスも割り、
こうやって6歳の中頃、おもむろに姉を殴ってしまい。
ついに家から追放されたのだ。
「せいせいしましたわ!これでもう……1人ですわ!」
正直、この時はまだ6歳で、生きていくお金もない……
私の家は森の奥に立っていたため、森を抜けるにもかなりの労力を要する。
なるべく消耗せずに歩いていく。
しかし腹減りはやはり起こるようで……
「お腹すきましたわ……」
私はもう歩く速度はすでに、亀より遅いような速度まで落ちていた。
それもそうだろう、もう2日
(あんな家……私は……これでいいんですわよね……)
「はぁ……はぁ……もう……ダメですわ……」
そうして私は気を失ってしまった。
6才の私には正直初めての経験も多い、まずは貴族の為、食事も豪華で1日食べない日なんてなく、ましては今日みたいに2日開けるなど貴族ではあるまじき行為に当たる。
「うーん……」
「あっ!お母さま!お母さま!目を覚ましました!」
私はどうやら生きているらしい……でもこの屋根は……私には見たことの無い屋根で目の前には私と同年齢だろうか?
いかにも貴族らしい服装をしている。
私は思わずまた睨んでしまう……のだがお腹が鳴り、ついつい下を向く。
「お腹すいたのですね!待っててください!すぐ料理をお持ちします!」
「あ……ありがとう……ございますわ」
私は絶句した。
今まで私に対してここまで優しくしてくれる人はいないのだ。
「どうも大丈夫ですか?私はミサ・リザイアと言います。あなたのような子供がどうしてあのような森の中に?私の娘がたまたま見つけて運んできたのですが」
「すみません……迷子になってしまいましたわ。助けてくれてありがとうございますわ!」
もちろん嘘である。
暴れて家紋を追放されたなんて知られてしまっては、警戒されてしまうからだ。
「へえ~!ちなみに私はロミ・リザイア!よろしくね!住むところなかったら、私の家で一緒に暮らそうよ!いいよね!?お母さま!」
「ええ、そちらのお嬢様が良ければ、しかし家族はどうなさったのです?」
「家族はいません、家から追放されました」
「そうですか……あなた貴族ですよね?貴族の追放は禁止されていますが……そうですか分りました。あなたはリザイア家が責任をもって面倒を見ます」
「よろしくね!えっと……」
「エリです!よろしくですわ」
これが私エリ・ウランとロミ・リザイア初めての出会いだった。
この時点で私には、もうすっかり人嫌いというものは少しだけどマシになっていた。




