雨と笠
「主様」
「どうかしたの?」
「雨が、降ってきました。天気雨のようです」
女服を着ている彼は、私の従者
もっとも
従者なんて、彼一人きりだけど
「おいで」
「え・・・?」
私は、彼を手繰り寄せる
「ねっ?、これで、雨にも濡れない」
彼を、私の被っている笠の中に入れた
大きな笠だから、人1人くらいなら入ってしまう
「主・・・様?」
彼の頬に手を触れ、吐息のかかりそうなくらい、彼を近くに寄せる。
「綺麗・・・ね、ほんと。絹のように柔らかくて真っ白な肌。私が、嫉妬してしまうわ」
「あ・・・主様」
「ねぇ、キミって、鈍感って言われない?」
「耳と尻尾のある妖怪、化ける狐 そんなものの生け贄になったんだよ?」
「は・・・はい!」
「生け贄が、キミでよかった」
そう言って、私は彼を抱きしめる
「ずっとこうしたかった、抱きしめたかった。・・・大好きなんだ。」
「ねぇ・・・結婚、しよう?」
「主・・・様・・・」
「僕、なんかより、もっといい人が」
「キミじゃなきゃイヤ」
「いい、かな」
「・・・はい!」
「これからは、私の事は名前で呼んで。敬語もいらない」
「いいんですか?」
「うん、だって・・・そうじゃなきゃ対等じゃないもん」
互いに、抱きしめ合う
天気雨はまだまだ降っているようだ。