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口は災いの元
「基本は大切。基本を一つひとつやっていくもの」
ポーリャはリンちゃんに、強めの口調で話す。
「経験を生かして、新しいことをやるんだよ」
リンちゃんもポーリャにムッとした様子で答えた。
「………………」
二人の間に沈黙が訪れる。
やがて雰囲気が凍りついたように張りつめていくと、勢いよく教室の扉が開く。
* * * * *
「それで手が止まっていたわけね」
緊張感を一気に和ませた姫野先生はお茶をマグカップに淹れる。
お茶出し道具が安かったからと姫野先生は買ってきた。
マグカップが三つ、ふきんを敷いたケースに置いてある。
どれも自分の家から持ってきたマグカップ。
それに注がれるお茶の音と香りがマジック研究会の教室を包む。