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心音
「……私一人でやりたかった」
「?」
「ポーちゃんや朝霧さんはいろいろできるしいろんなこと知っているし。私だけが
取り残された気がして。だから一人だけで自分の力だけでやりたかったの」
一息にまくし立てるリンちゃん。
そんなリンちゃんをポーリャは抱き寄せた。
「ポーちゃ――」
「心臓の音には人を落ち着かせる効果があるって母さんが」
同じことを母から聞いたことがあるリンちゃんは、ゆっくりと瞳を閉じた。
ポーリャの心臓の音を聴く。
リンちゃんもしばらくの間、ポーリャに抱きしめられていた。
「うん。ありがとうポーちゃん」
「どういたしまして」
いつものリンちゃんに戻ったと感じたポーリャは、抱きしめを終え、話す。
「私にもリンちゃんに追いつきたい気持ちは、あるよ」
「ポーちゃんが?私に?」