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胸の内
お茶が思ったより熱く、リンちゃんはフーフーと冷ます。
それを見た姫野先生は、鏡台の前にリンちゃんを座らせドライヤーをかける。
「これでよしっと」
「ありがとうございます、先生」
髪も乾き、お風呂に入り、体は温まった。
けれど、心はまだ冷えてきた。
「朝霧ちゃんもポーちゃんも大人っぽくて。でも私は子供っぽくて。だから大人に
なった自分を見たらなにかわかるかなって変わるかなって」
リンちゃんは魔法を使った理由を、早口で姫野先生に伝える。
「人は人。自分は自分よ。分けて考えようね」
「でも私は!それでも私は!大人になりたいんです!なんでもできる大人に!」
リンちゃんは胸の内を明かす。
「先生、大人になるってどういうこと?どうすれば、先生みたいな大人になれるの?」
すがるように尋ねるリンちゃんに、姫野先生は諭すように話す。
「そうねえ。いろいろあるけど、周りの花を見てみるのも良いものよ」
外では春の雨がやさしく降っていた。