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声の主
「姫野先生……」
今にも泣きそうな顔を上げ、声の主をリンちゃんは見つめた。
「いったんうちにおいで。今のままじゃ風邪ひいちゃうよ」
* * * * *
「……お風呂お借りしました」
「温まった?」
「……はい。ご迷惑をおかけしました」
「大丈夫よ。魔法を解除も先生のお仕事だから」
「魔法で服を小さくするのも、ですか」
「ええ。リンちゃんには大きいからね」
リンちゃんは髪をタオルで丁寧に吹き、洗濯かごに入れる。
姫野先生は揺り椅子から立つと、お茶を淹れ、コップをリンちゃんに差し出す。
雨と洗濯機の動く音が、二人の間を流れる。
「ゆっくりしていってね。私は一人暮らしだから、お客さんは大歓迎よ」