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気恥ずかしさ
気落ちしているリンちゃんのために、両親は昼食を外で食べることにした。
「いらっしゃいませ」
スパイスの香りがする店で、聞きなれた声がした。
「こんにちは。ここ、マリー君の店だったんだ」
「おなか一杯食べていってね」
タンドールという窯でナンと言うパンが焼かれている。
「カレーの辛さを選んでね。次にカレーの種類、ナンかライス、好きに選んでね。
両方選べるハーフナンハーフライスってのもあるからね」
マリーは手慣れた手つきで、水を持ってきて、説明する。
「お父さんは辛口のシーフードでハーフナンとハーフライスにするね」
「お母さんは辛口のベジタブルでハーフナンとハーフライスにするわ」
「え、二人とも辛口なの」
「リンちゃんは好きなのを選んで良いよ」
「……甘口のチーズでハーフナンとハーフライスをお願いします」
メニューで顔を隠して、小さな声で、リンちゃんは話した。
ストレートの髪からわずかにのぞく耳は赤くなっていた。