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……ありがとう
目が覚めると、ポーリャが膝枕してくれていた。
すぐ傍には、鈴をつけたクマのぬいぐるみがあった。
「魔法を使うときは、もう少し周囲に気を配ると良いですわ」
「えーと、ひょっとして巻き込んじゃった?」
「ええ。最低でも、校舎裏一帯は、巻き込ましたわね」
(私とポーリャと朝霧の三人だけだったのは不幸中の幸いかな)
「リンちゃん……よかった」
朝霧の手には杖がある。ポーリャの手にも。
「……ありがとう、ポーちゃん。朝霧さん」
「ポーリャさんだけは愛称ですのね」
「ポーちゃんとは幼馴染だから」
「そうですか。少しうらやましいですわね」
リンちゃんが理由を尋ねようとすると、足音が近づいてきた。
「ちゃんと描いているかー」
美術の先生が見回りに来た。
「どうして、杖やぬいぐるみがあるんだい?」