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生地はしっかり、休ませて
「リンちゃんの兄さん、帰ってきたんだ」
「お父さんの出張が終わるまでまでいるって」
ポーリャと会話するリンちゃん。
「一二三く~ん。もっとしっかりかき混ぜてよ」
「菫山って呼んでくれよ。名前呼びは、ちょっと困る」
「名前も良い響きじゃん」
岩筒地と菫山の会話する声が聞こえる。
リンちゃんとポーリャ、朝霧は岩筒地や菫山が参加している料理研究会に
合流した。集まるのは週一回で放課後のみの自由参加になる。
「電子レンジ、警備員室から借りてきましたわ」
「電子レンジでスポンジ作ったら、生クリーム塗って、イチゴ乗せようね」
磁石で黒板に付けてあるレシピを確認する朝霧。
朝霧と一緒にいた先輩から、生地を混ぜてみる、と聞かれ頷くリンちゃん。
(姫野先生が帰ってくるまでに料理も好きになろう。音楽はもっともっと好きに
なろう。好かれる人になろう。姫野先生みたいな人に)
音色よ、音色、音の色、とリンちゃんは呪文を口ずさみ、かき混ぜ始める。