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目は口ほどにものを言う
順調に手品は進んでいく。
マリーがトランプの手品を見せ、拍手のあと、朝霧がコインの手品をやっている。
リンちゃんは手のひらに人の文字を三回書いて飲み込む。何度も何度も。
「せ、先生……緊張をほぐすには、どうしたら良いんですか?」
「先生も緊張しているよ。そしてみんなも」
姫野先生はリンちゃんに視線を合わせ、優しく語りかける。
「自信を持って踏み出して。最初の一歩を踏み出せる勇気はここにあるはずよ」
姫野先生は自分の胸に手を当てる。
「わ、わかりました。が、がんばってきます」
拍手が聞こえ、ポーリャの番になる。
リンちゃんは手と足を同時に出して歩き、準備を始める。
シルクハットの手品をやっているポーリャと目が合うリンちゃん。
『リンちゃんは頑張りすぎ』
ポーリャの目が語りかける。
(そっか、そうだよね。普段通りで良いんだよね)
拍手が起きる。ポーリャの番が終わって、リンちゃんの番になる。