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維持することも大切です
道路から声がする。
よく見ると街路樹に朝霧が登っていた。
木に駆け寄るリンちゃんとポーリャ。
「店内を見回ったあと、ひょっとしたら外かと思って登っていましたの」
「落ちると危険。降りよう」
朝霧は返事をし、木からとても優雅に舞い降りた。背に翼があるかのように。
「今の、絵に描いても良い?」
「ええ。良いですよ」
「魔法で探してくれたの?ありがとう朝霧ちゃん」
「自分のためにも魔法を使いましたから。お礼を言われるほどでは」
「自分のため?」
「せっかく身に着けても、努力を怠ると衰えていってしまいますから。たまには
使うようにしていますの。何にでも言えることですから」
「朝霧ちゃん……」
「清白さんとポーリャさんだけですわ。こういうことを言えるのは」
朝霧は楽しそうな笑顔を、リンちゃんとポーリャに見せ、遅刻を詫びた。