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月明かりの中で
「だったら、みんなと仲良くして思い出増やそうよ」
「すでに、口うるさい子と印象づいていますのよ?手遅れですわ。むしろ私と
仲良くしていたら、清白さんもポーリャさんも陰口たたかれますわよ」
珍しく早口で朝霧に、どう言葉を返そうか、リンちゃんは考える。
ポーリャもリンちゃんと|同じく、考えている様子だった。
夜の木々が風でかすかに揺れ、音を奏でる。
少しの沈黙の後、歩き出そうとする朝霧にリンちゃんは声をかける。
「私、手伝うよ。みんなと一緒にご飯食べたりお話したりすれば、印象も変わるって」
朝霧の肩に手を置いて励ますリンちゃん。
「変わろうとすれば、変われる。だから、私も手伝う」
もう片方の肩に手を置くポーリャ。
「清白さん、ポーリャさん……」
「携帯もあるし、連絡取りあえるから、とりあえず頑張ろうよ」
うっすらと涙を浮かべた朝霧は、リンちゃんに言葉を返す。
「『とりあえず』は場当たり的なので、使うなら『ひとまず』ですわよ」