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雨上がりに
――春夏秋冬、春に請う
《さき》ほどまでの、どしゃぶりを
春雷または、催花雨と
もしも言うなら、養花雨に
変えておくれと、願います
唱え終えると、朝霧は杖を自動販売機の奥に向ける。
そこには木があった。
大木が悠然と佇んでいる。
ゆっくりとクルミちゃんの姿が透明になり、消えていく。
「クルミの木《き》も遊びたかったんでしょうね」
「え?まさかクルミちゃんは木の妖精だったの?」
聞き返すリンちゃんに、朝霧は楽しそうな笑顔を見せ、答える。
「と思いますわ。さあ、和菓子屋さんに急きぎましょう。また雨が降りますわ」
傘を閉じる朝霧とポーリャにリンちゃんも続き、何を注文しようかと聞き合う。