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速度をそろえて
「ここを歩いて戻ろう」
ポーリャが先を行き、朝霧が後に続く。
リンちゃんはと言うと、クルミの前でしゃがみ、声をかけた。
「乗る?クルミちゃん」
嬉しそうに笑うクルミを、リンちゃんはおんぶして歩き出す。
(私も昔、お兄ちゃんにおんぶされたことあるからわかるもん)
前を歩く二人の背中を追いかけるリンちゃん。
やがて坂を上り、地上に出る。
雨は上がり、空にはわずかに青空が見え、その雲と雲の隙間から虹がかかる。
見渡すと花畑の入り口で、少し離れた場所に案内板や自動販売機があった。
ポーリャが安堵の溜め息を漏らし、朝霧がねぎらいの音場をかける。
「お姉ちゃんたちが魔法を使ったのは内緒だよ」
リンちゃんは背中から降ろしたクルミに、口元に人差し指をあてて念を押す。
「ひょっとして……」
楽しそうに笑うクルミを見て、朝霧は呪文を唱える。