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雷雨
「迷子センターってありました?」
「あるよ。でもここからは少し歩――-」
歩くよと言おうとしたのだろうか、ポーリャの声は途中で消えた。
雨音でかき消された。傘を落としそうになるほど、どりゃぶりの雨が降る。
「ひとまずどこかで雨宿りしましょう」
「待って、私に良い考えがあるの」
周囲の人たちが建物に走っていく姿を見かけたリンちゃんは、遠くに聞こえる
雷鳴にすくみつつ、魔法を唱えた。
――音色よ、音色、音の色
ざあざあ振りの、雨の中
大きくできた、水たまり
中をみんなで、進ませて
リンちゃんを中心に空気が生まれ、水たまりの中に入っていく。
「このことは内緒だよ……えーと、クルミちゃんって呼んで良い?」