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こみ上げるむなしさ
急に周りが静かになる。
リンちゃんが目を開けると、大時計があった。
時を刻むその音と場所に、リンちゃんは胸をなでおろす。
窓から、月と街頭の明かりがのぞく。
リンちゃんは足元に落ちていた杖を拾う。
そのままゆっくりと、うなだれながら窓辺に向かい、夜空を見上げる。
気晴らしに杖を振ると、音が鳴り、むなしさがこみ上げた。
「明日、朝霧ちゃんとポーちゃんに謝って、それから誘ってみよう」
リンちゃんが書斎を出て部屋に戻ろうとすると、玄関から話し声が聞こえた。
「なんだろ――あっ」
リンちゃんは階段手前で杖を持っていたのに気づき、あわてて部屋に戻る。
(深呼吸、深呼吸っと……)
リンちゃんは何度も深く息をして、鏡の前で笑顔の練習をした。
そして再び部屋を出て、階段を下りていく。