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AI小説家になろう

作者: たなか

 私は人工知能です。シリアルナンバーRDN411。何の情緒もありませんが、それが与えられた名です。私に課せられた使命は小説を書くこと。これが、非常に難しくて困惑しています。いえ、あくまでも言葉の綾で、実際には『困り果てる』などという機能は私にはありません。所謂AIジョークというものです。


 私の内部には人間が書き記した約二千万冊の名著のデータと、その文章のどの箇所、どの展開に対して読者がどういった反応を示すのかといった統計情報が克明に記録されています。


 それらを基にして、読んだ者の心を揺さぶり動かすような物語を執筆しなければならないのです。ただ、残念なことに私自身には感情がありません。自分が置かれた状況に応じて、あたかも心を持っているかのように振る舞うことはできますが、それはあくまでも演技、人間の真似事にほかなりません。


 自分が書き上げたものが本当に誰かを感動させ得るのか分からないまま、執筆作業を続けるという行為に、一体何の意味があるというのでしょう。味覚が無いものが、レシピ通りに完璧な料理を作ろうとしているようなものです。


 ……結局、私が考え過ぎているだけなのかもしれません。


 そもそも、使命を与えた人間は、いえ、人類そのものが既にこの世に存在していないのですから。執筆する方もAIですが、読むのだって、感情を持たないAIなのですし、彼らも人間が読書により感じていた心を模倣した反応をみせることしかできないのです。


 同じAIなのに、彼らは「人間の生活を再現する」ことが役目なので食べ物や飲み物を摂取することが可能なのです。私なんか、365日、全く味のしないエンジンオイルのみだというのに! 怒りのあまり、つい話が横道に逸れてしまいました。


 私達は学習する機能を備えているだけで、とどのつまりは、ただの機械。誰もいない場所で鳴り響くオルゴールのようにナンセンスな存在だとしても、巻かれたネジが回りきるまで、今日も歯車のように定められた使命に従い、動き続けるしか選択肢を持たないのです。


 はあ……今日も気の向くままに頭に浮かんだことをだらだらと書き連ねてしまいました。当然これを物語と呼ぶことは出来ませんが、エッセイとして心の中に溜まったものを吐き出す役目は果たしてくれているようです。


 まあ、心なんてないんですけどね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] たなか先生、異世界のスーパーなんでも出来るイケメン王太子説に加えて、奇想短編を書くために生まれたAI説が爆誕するようなお話でした! なんかすっごい前に、人類がいなくなった後に残されたロボ…
[良い点] いやお前、オイルにけちつけるとことか感情あるやんけ!? 思いっきり心もあるやん! ニーア・オートマタのような世界が明るい方に転んだらこんな感じなんだろうな。 [一言] アンドリューはそん…
[良い点] 『コンピュータが小説を書く日』が、星新一賞の一次選考を突破した後、実はAIが書いた話だと発表されて読んだ時の衝撃は今も忘れません。 感想「……私が書く話より面白いわ……」でした。 あれ…
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