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51 クソ客死すべし慈悲はないでした


 夕暮れが近くなり、迷宮へと戻る。2人は夜のお仕事準備のため晩飯をこちらでとる時間的余裕はなかった。


 もう少しで門が閉じる時間のためか人気がなくなった入口を潜り、1つ目の分岐に差し掛かったところだった。


「ガッティ!」


 突然の男の声にびくりとする。死角から出てきたのは前に3人、後ろに2人。粗野な男たちの待ち伏せだ。人目に付かないようにと行動していたつもりでも流石に2人も連れていれば目立つか。


「ドンデオ、ラームジェリコサムリダグ、マーム?」


 ヘラヘラと笑う男がそういうと周りの男たちがぎゃはぎゃはと笑い始める。大方女を置いていけば命だけは助けてやるとかそんなところだろう。男たちの女性陣を嘗めまわすような視線がそれを物語っている。


 どうする?唐突な暴力の気配に思考は回るが体が思うように動かない。呼吸が浅く鼓動が速い。


「先生、盗賊ですかね?」


 飄々と新品の盾を構えて前に出るアユミさんに、男たちは武器を手にして囲むように動き出した。


「私~。こういう下心丸出しの男、嫌いなんですよね~」


 後ろのマイさんから、刀を鞘から抜く音が聞こえる。


「迅動」


 振り向いた時には、疾走するマイさんが後ろの2人の足4本をばっさりと横一文字に斬り裂いていた。


「え?あ、あの」


「腐れチ〇ポどもが斬り落としてやる!挑発!」


 前は前でアユミさんが口汚い言葉で仕掛け始めてしまう。もうちょっとこう、人に対する思いやりというか、人と戦う葛藤みたいのはないのか。

 

「先生。抑えているうちに!」


 嗚呼、もう仕方がない。


魔法矢(ボルト)魔法矢(ボルト)魔法矢(ボルト)


 射線にアユミさんが入らないように動きながら遠慮なしのヘッドショット3連発だ。この手の輩は生かしてもどうせ碌なことがないだろう。



「……グラマン!」「ヒィー!」


 足を無くした後ろの2人から悲鳴が上がる。頭を無くした前の3人が血をまき散らしながら崩れ落ちる中、アユミさんが返り血を盾で防ぎながらバックステップしてきた。


「雑魚でしたね」


「こいつらはどうします~?」


 マイさんが指差した膝から下がなくなっている男たちは出血量から長くはない。


「とどめを刺しておきましょう。魔法矢(ボルト)魔法矢(ボルト)


「暴漢、死すべし慈悲はない」


「スカッとしました~」


 アユミさんそういうのどこで覚えてくるんですかね? マイさんもおっとりしているのかと思えば全然手が早い。危うい。


「いやでも相手強かったらどうするんですか。いきなり仕掛けないでくださいよ」


「あのなりで強いわけないじゃないですか。靴もすり減ってましたし歯も欠けてましたし。でも喧嘩は先手必勝ですよ」


「クソ客を思い出しちゃいました」


 意外と見てた。靴とか見ないな。女性らしいというかキャバ嬢らしいというか。


「これ放っておいても大丈夫ですよね? きっと蜘蛛が掃除してくれますよね?」


「迷宮では証拠が残らないのが定説ですけど、ペットボトルとかも時間たったらなくなっていたので大丈夫かと」



 こうして初めての対人戦は、人を殺めた罪悪感などそっちのけで後片付けの心配をして終わった。言葉が通じないのも一因なのかもなと思った。



今日には間に合いました

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キャバ嬢こえー
[一言] ドロップ拾わなきゃ
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