04 釣り、終わりました
レベルアップしたせいなのか農民になったせいなのか鍬を振るうのが快調になった俺は、その後も蜘蛛を音と肉で誘き出し、腰が入ったスイングでレベルを3つ上げた。
ただただ、鍬を振り下ろす簡単な作業でした。
しかしだ。この蜘蛛は何もドロップしない。5分に1匹は倒していたから30匹はやったはずだ。倒しても何も落ちない。敵が消えてなくなるパターンだと魔石とかお金とか落とすのが普通なんじゃないの? 普通ってなに?
後、もう経験値も打ち止めかもしれない。もう3時間やって1上がるかどうかな気がしている。上がらないわけじゃないだろうけど上げるための蜘蛛の数が指数関数的に増えていく予感。多分合ってると思う。
「1日で終わりか」
安全な狩りの終わりが見えてしまった。
「装備整えるにしてもリターンがなぁ……」
よりアグレッシブな狩りのために装備に投資しても現状回収できるあてがない。貯金はまだあるけど無収入だとそんなに余裕はない。レベルアップして肉体労働でもしろというのか。
「上に行ってみるかなぁ」
ここは迷宮1層。地上には街があるそうな。金策を考えねばなるまい。地球との貿易ができれば色々解決するのだ。上手く行けばもう一部屋借りてトイレ問題も解決する……かもしれない。迷宮に人が集まって街ができているなら何らかの稼ぐ手段があるはず。金の匂いが皆無のところには人は集まらない。
問題は、言葉が通じる気がしないところか。
自室に戻り検索してみる。
「言葉が通じない 手段……と」
うーん。日本語でノリよくジェスチャーで……か。まぁ向こうさんも言葉通じない外国人と会うこともあるだろう。あるといいなぁ。紙に絵を描くのもありだろうけど紙もペンも貿易の戦略物資の可能性がある。どの程度の文明度か不明なのだ。
「黒板代わりに黒いクリップボードとチョークくらいならいけるか」
文字もわからないので絵で伝えられることも限られるがないよりはマシだろう。早速、自転車に跨りホームセンターへと向かった。
ペダルが軽い。
見た目はまったく変化してないが間違いなく身体能力は上がっているようだ。
思わず口角が上がる。
成果が出ている。成果が見える。
金銭的課題が解決できればもっと頑張れる。
装備を整えてもっと下層へ。
あ、牛丼屋。寄って行こう。