25 ビジネス準備始めました
日の出と共に鍵を返却し、自宅に戻りでシャワーを浴びる。
「あっちで寝泊まりするのはとりあえずペンディングだな」
野宿と考えればいいのかもしれないが、トイレがあれでは態々あちらで寝泊まりする利点もない。洗濯も風呂もこっちの方が断然いいのだ。
「名刺、激安っと」
俺はとりあえず名刺を作ることにしていた。
マッサージ業類似行為いわゆるリラクゼーション・マッサージなどの〇〇マッサージの名刺だ。マッサージ自体はあん摩マッサージ指圧師の独占業務なのだが、〇〇マッサージとすると無資格でオッケーなのだ。
潰れたあの店もマッサージではなくリラクゼーションだと小さく書かれた同意書をお客さんにサインしてもらっていた。メニュー表はマッサージなのにだ。
似たような感じで自分が持っている柔道整復師は整骨(接骨)を独占的に行うとなっているが、整体は無資格でオッケーだ。
知らない人は有資格者がやっていると勘違いしがちなのだが、精々が勝手に立ち上げた業界団体が認定している民間資格程度なのだ。グレーゾーンが広いせいで国家資格を持っていても煽りを食らって薄給。ならばグレーゾーンを利用してやるしかない。
「ヒーリングマッサージでいっかな。肩書き回復士」
ちなみに診断と治療を行うのは医行為で医師免許保有者の独占業務だ。なのでヒーリングマッサージでは診断はしてはいけない。
小治療は目立つ外傷はやらずにメインは小解毒で、よく分からんが何となく良くなった気がする。そんな雰囲気でいけばグレーゾーン内角高めストライクでギリセーフだ。
ついでに診断で欠乏している栄養素があれば摂るように食生活改善もアドバイスしてあげればなお良いだろう。分かっていたとしても病気の特定発言をしてはならない。悪そうだから病院行った方がいいですよとアドバイスするくらいだ。
「問題はお値段付けと営業面か」
安くして沢山の人を相手にしなければならなくなるのも仕事に追われるようで嫌だ。となると高くても金を払う人を相手にする必要がある。
手持ちの武器は小治療と小解毒。
「二日酔いと胃痛あたりかな……。強気に30分1万円にしとこう」
水商売のお姉さんと、そこに通う客をターゲットに仮置き。
営業日は金曜土曜日曜、日の出から出張可で昼まであたりにしておく。他の日や時間に副業してもいいし。
開業届も確定申告前に出したやつで多分大丈夫。ぶっちゃけ開業届ってそんなに急いで出さなくても個人事業主はできる。できてた。
住所などなく連絡先が携帯番号とSNSのみの怪しげな名刺デザインとなってしまうが気にしてもしょうがない。100枚で980円。明後日届くそうな。
それまでにレベルを上げつつ、どうやってターゲット層にアプローチするかを考えてみよう。




