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02 トイレが異世界になりました


 黒いピカピカさんは一方的とも言える会話を終えると気が済んだのか、とっとと消えてしまった。


 しょうがないので新世界へのドアを開けてみた。トイレの。


 もちろん、フルオープンではなく恐る恐る少しだけ開けて覗き見だ。



 本当にトイレではなくなっていた。ドア隙間から見えたのは薄暗い洞窟だ。真っ暗ではなくて少し安心した。


 行き来できるのは自分だけとのことだったがトイレどうしよう。朝のトイレ独占は一人暮らしの醍醐味だったのに……。


 それはともかく、何となくドアの隙間から流れてくる空気が濃い。濃いというか吸い込んだ肺や気管支も熱を持ってる気がする。いや熱い。何これやばい。


 慌ててドアを閉めるも中々胸の熱が落ち着かない。心臓もバクバクいっている。


 効くかわからないけど鎮痛剤代わりに風邪薬を飲んで布団に入った。





 起きたら夜だった。昼に寝たらそりゃそうか。


 胸の熱も不自然なくらい治まっていた。


 あれはもしかすると魔素的なもので、もしかしなくてもその環境に慣れるところから始めなければならないのでは……。


 ゲームみたいにお手軽にとは言わないが、レベル上げて塩胡椒売ってヒャッハーとかちょっと考えていたのに厳しすぎる……。そういえばチートも貰っていない。戦闘能力もトイレもない。


 そこまでして異世界に行く理由はあるのか?



 いや行くでしょ! だって異世界だもん!


 非日常な話を聞いているだけでワクワクしてしまったんだ。ようやくやってきた平凡な俺の特別!

 やればやったなりの結果が残せるかも知らないんだ。こんなやってもやらなくても大した役にも立たない世界で燻っていられるか! 死ぬ気で魂磨くに決まってる。


 俺は再びドアを開ける。



「あれ?」


 ドアの隙間に顔を突っ込み深呼吸してみる。


「あれ、何ともないな」


 あれほど熱を持っていた呼吸器が何ともない。


「……馴染むの早っ」


 懸念はあっさりとなくなった。ドアを開け放つ。


 黒いピカピカさんによればこのドアは俺しか通れない。そもそも誰からも何からも見えないそうだ。他人からはトイレでしかない。そして、魂を鍛えるとはレベルアップと呼び替えてもほぼ大丈夫な内容だった。

 敵を倒して魂の一部を吸収し自分の魂とする。同族はノーカウントで同じ敵ばかりだと吸収量が減っていく。強い=魂が強いでほぼ正解。ようは経験値とレベルアップ!


 であれば俺がやる事は一つ!


 釣りだ。敵を釣ってきて安全なこちらから敵を屠る!


 餌は何が良いんだろか。


 その前に一応確認しておこう。


「そいやっ」


 おもむろに空いたペットボトルを投げつけてみた。結果、境界を無事通過してカラカラと転がっていった。


「ヨシ」


 指差し確認よし。遠距離攻撃もアリと。後はモンスターがこちら側に入ってこれないことが確認できればいいんだが……。


「キィキィ」


 微かに鉄を引っ掻いたような鳴き声が聞こえた気がする。モンスターか?


 息を潜めて待つ事数十秒。カサカサと軽い音と共に滑るように現れた蜘蛛がペットボトルを齧ろうとして弾いた。再びカラカラと鳴り響きこちらに戻ってくるペットボトル。


 蜘蛛……で良いんだろうか。脚が多い気がする。そして速い。


 やはりというかこちらには気付いてないようだ。多分。どこ見てるかわからんけど。


 念のため一度ドアを閉めて武器になるものを探してみる……が包丁かカッターナイフくらいしかない。



 これはホームセンターでも行くしかないか……。殺虫剤は効くのかな……。



 その日は武器になりそうなものや殺虫剤を布団の上でネット検索してるうちに寝た。


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