18 値切りました
「槍かな……」
地上に出て、換金屋で銀貨6枚ほど追加で手に入れた俺は武器屋を散策していた。
今日の狩りは散々だった。
レベルは8のままだ。水鉄砲でハバネロソースは封印だ。せめて水風船に入れるとか近くで飛び散らないようにしないとこちらのダメージもやばい。劇物を扱うなら手袋とマスクとゴーグル必須だ。
スライムは核を突きで仕留めるのが良さそう。とはいえ長過ぎる武器は取り扱いが難しそうだ。
店主に予算銀貨10枚を見せ、買えるものを指差してもらうがしっくりこない。柄がただの棒だったり、金属の物は重過ぎる感じがしたのだ。
「剣はどうかな」
槍の店を後にし、複数軒ある剣の店を順番に覗いていく。
見ているだけで楽しいが、銀貨10枚ではあまり良いものが見つからない。提示される物は刃渡り3〜40cmの短剣やショートソードが主だったがリーチに不安がある。頑丈そうではあるが街中仕様だろう。銀貨もボッタクリ露店で30枚くらいはあるので予算を増やしてもいいかもしれない。
最後の店の入り口を入ったところには傘立てのようなものがあり、複数の剣がワゴンセールのように売られている。
「こういうところに伝説の剣が……」
あった。伝説の剣はなかったが、日本刀らしき細身で反りがある剣が古ぼけた鞘に包まれ場違い感に身を縮めながら立ち尽くしていた。
鞘から抜いてみるとサビが浮きまくり、欠けも潰れた部分もところどころあるが日本刀だ。掲げて刃を見ると歪みはない。何とか使えそうだ。
「ハウマッチ?」
奥にいたやる気のない店主に刀を指差し聞いてみる。
「マフデ」
銀貨5枚!買う!
まずは銀貨4枚を取り出し顔色を窺う。
「まけてくれ」
俺のドスの効いた日本語に、店主は銀貨を受け取り重々しく頷いた。
いい買い物をした。
今日は良いところがなかったが最後にいい買い物ができた。ハバネロソースは完全に自業自得なんだけどもハバネロソースを使って楽勝みたいな物語には苦言を呈したいマジで。いや、それも人のせいだけど。フィクションを信じた俺が悪いのだ。
沈みゆく夕日を眺めながら、そういえば腹が減ったなと家路を急ぐのだった。
たまには良い物でも食べよう。野菜食べねば。