17 ダメージを受けました
4層へ下りる。休憩を挟みながら魔石の数を数えるとゴブリン討伐数は26匹。銀貨5枚と考えると結構な数だ。
戦闘音なし。匂いは……酸っぱい?
いや、足音が聞こえる。
落ち着いた足音なので帰還するパーティなのだろう。
迷ったが、マスクを着け階段横に露店を広げた。100円ショップで補充していたLEDランタン10個に懐中電灯2個だ。
ランタンの明かりに誘われるように現れたのはお客さん第一号のむさ苦しい男達。
「マジで」
盗賊ではないことに安堵しながら商売モードだ。
お調子者がランタンを独り占めしようとして周りから怒られたりとそんな一幕もあったがあっさり完売。プレゼントするなり転売するなり好きにしてください。銀貨24枚、ボッタクリ商店ボロい。
気を引き締め直して探索開始だ。
左手を壁に付けながら、右手にはメイスだ。
敵の気配が全然ない。
進む。
交差を左へ左へ。
ふと、メイスが重くなった気がして目をやるとクラゲの触手のようなものが纏わりついていた。
「いつの間にっ!」
バックステップで引き剥がすと全体像が見えた。
1mくらいの楕円形。透明な体に核のような物が中心部に浮いている。動きは速くない。
「スライムか」
ゲームでは雑魚の代名詞だが、取り込まれたら窒息だろう。何より暗がりでその透明感は反則だ。
そして大体鈍器が効きにくい。
伸ばされた触手を払い潰しても痛手になっている気がしない。
「核だよな」
躱しながら近づくと、細くて小さな触手が無数に生み出される。スピードがないとはいえ中々厄介だ。
メイスのリーチだと接触するくらいまで近づかないと核までは届かない。届いたとしても鈍器じゃ核だけ避けられそうだ。
「ハバネロソース!」
水鉄砲に充填された10万スコヴィルが火を噴く。こちらの鼻粘膜まで刺激してくるがスライムは多少濁っただけで微動だにしない。
「ガハッ」
撤収だ。こんなのに囲まれたら手の打ちようがない。
咽せながら涙を流し走る。敏捷が向上した俺は風のように3層へと逃げ帰った。
後悔していた。
ハバネロソースは諸刃の剣……。
こんなん飛び散らかしたらあかんやろ!
涙と鼻水が治るまで階段で後悔し続けた。痛い!熱い!