11 街に侵入しました
2層でのレベルアップは回復職探しのため1回だけに留めたかった俺は、1層を越えて真っ暗な地上までやってきていた。
石造りの壁の、少し高い所にある明り取りの窓から脱出する。目印として明り取りにLEDランタンを置いておく。これで明かりを見つけられればこの真っ暗な街でも何とか戻ってこれる。
真昼間だと街にいるだけで逮捕される(かもしれない)リスクを冒してでも地上にやってきたのは、教会を探すためだ。
神が管理者として存在し、レベルアップでアナウンスまである。これは確実に崇拝されているだろうし、その施設が解放された職業など何らかの設定に関わっているだろうという確信があった。
黒パーカー黒フード黒マスクで闇に紛れる。
迷宮のあった建物は土間だったが、外は石畳の広場がありその向こう側はバリケードのように低い所には窓さえない長屋が囲んでいた。これじゃ外の灯なんて見えなかったわけだ。モンスターが出てきた時のための二重の防備なのだろう。
1箇所だけ格子状の扉があったが、向こう側ではやる気のない見張りが見張り小屋で座っていた。というか寝てそうだ。暗くてはっきりしないがイビキが聞こえてくる。
さて、どうしたもんか。
見張りを起こして通してもらうというのも危険だろう。言葉が銀貨2枚くらいしか分からない。やはり不審者としてとりあえず逮捕の方が確率高そうだ。
長屋の方はかなり上の方に跳ね窓が付いていたりするが、丸太を縦にぶっ刺して並べたような壁なので登れなくもない気がする。所々矢を射るための穴らしきものもあるし。
ちょっと試してみて、ダメだったらロープなり道具なりを持ち込めばいいか。
迷宮の建物に置いていた目印ランタンを回収して、見張り小屋とは遠い方の長屋の角へと向かう。
「……コソ泥みたいやな」
角の壁の丸太の溝を両手足で突っ張り、難なく登っていく。越えた先には屋根に足場もあり街を一望することができた。
月明かりの薄らとしたシルエット、いくつか明かりも見える。あの辺は繁華街か。
「ターゲット発見!」
大きめの建物、その中に鐘楼らしき塔を見つけた。宗教施設ならばあれだろう。
方向を意識しながらひっそりこっそりと足場を渡り、梯子を見つけ街に降り立った。
「ついに始まる俺のアーバンライフ」
どう見ても不審な不法侵入者だった。
1日2更新はきつかったので1更新にします