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国の英雄である吸血鬼の魔女様は鬼の副隊長に恋をしたようです

作者: no_su

世界設定が全く生かせておりません。

無理矢理なご都合主義ですが、あたたかく読んでいただけると幸いです。



いいかい子供たち、静かにお聞きよ。


いにしえの魔女様は、実は力ある吸血鬼でね、王妃様と共に初代英雄王ギルバート様のシャリーゼ王国建国を支えたそうだ。

ギルバート様はいにしえの魔女様を側室に迎え王妃様と同様に愛したという。

しかし時は流れ、ギルバート様は亡くなった。


それから約300年もの時が流れたね。

吸血鬼であった、いにしえの魔女様はただ一人生き続け今なおシャリーゼ王国を支てくださっている。

それがスフラ・シャリーゼ様だ。


ん?なんだい?スフラ様なんて知らないって?

そうだろうね。

スフラ様は長い寿命を持つ自分がむやみに人と関わるのは良くないだろうとおっしゃって、あまり表に出ることをよしとしない方だそうだから。

だからお前たち子供は知らないだろうね。

これは大きくなったら学校で習うことなんだよ。


それなのになんで急にお前たちに話したかって?

ふふふ、それはね・・・



-----



「んー。やっぱりお昼時は街が賑わってて楽しい。本当に王城って堅苦しくて嫌になっちゃう。」


スフラは魔法でおとなしい町娘に変装していた。

ただでさえ、スタイルが良くかわいらしい顔立ちであるのに、さらに長い銀髪に赤眼といういかにも吸血鬼といった容姿は街中では人目を引く。

スフラは変装して別人になりきることも含めてお忍びを楽しんでいた。


そもそも、みんな私を神聖視しすぎているでしょ。私はみんなが思っている国の為に心を砕き人生を捧げた乙女って訳じゃないのに。


国を影から支えると言えば聞こえはいいが、スフラは実際、堅苦しい作法が嫌いなため出来る限り表舞台に立たなくてもすむようにしたかっただけだった。


そもそも、ギルバートの側室にではあったが、寝室を共にしたことはなかった。

正確には、体裁の為に一緒の部屋で寝たことは何度かあるが手は出されていない。


ギルバートは性別を超えた親友だった。

側室になったのは、当時、偏見から迫害の対象となっていた吸血鬼の地位向上の一助になればと思ったからである。

そのことは正妃も知っていて、応援してくれていたし、彼女とも大の親友だった。


親友たちが築き、スフラ自身も建国から支えてきたこの国ことは愛している。

だが、生来のスフラの自由奔放な気質もあり、王城での堅苦しい生活は向いていないのだ。


スフラは街にお忍びに出かけるのが何よりの楽しみだった。



スフラは久々のお忍びに上機嫌で大通りを歩いていた。

すると、急にあたりが騒がしくなってきた。


「何かあったの?」


スフラが様子を伺っていると、突然男が飛び出してきて、スフラにナイフを突きつけた。


「止まれ止まれぇ!この女がどうなってもいいのかぁ!」


「やめろ!そんなことをしても、罪が重くなるだけだ。」


「うるさい!黙れ!この女がどうなっても知らないぞ!」


スフラは男に腕を掴まれた。


まさか私がこんなことで人質になるとは思いもしなかった。

魔力が漏れないように能力に制限をかけ過ぎていたかな。

まあ、私はいざとなればどうにでも出来るから人質になったのが私で良かったけど。

でも、私の正体がバレたら大騒ぎだろうし、この男も相当罪が重くなっちゃうだろうな。


しかし、スフラの思いとは裏腹に男は捕まえようとする警備隊に抵抗して暴れた。


このままだと周りに被害が出るかもしれない。


仕方ない、私が解決するしかないか。


そう思ってスフラが魔法を放とうとした時だった。

突然、黒い影が視界を横切った。


「大丈夫か?」


黒い影はあっという間に男を倒してスフラに聞いた。

平均よりだいぶ大きい身長に、がっしりとした体、そして何より黒髪、灰眼で見る者を怖がらせる凶悪な顔、黒い影の正体は王国一の剣豪にして、王国軍鬼の副隊長と呼ばれるガルド・ハスタージュだった。


スフラが意外な人物の乱入に驚いていると、ガルドは一瞬辛そうな表情になり、急に後ろを向いた。


「すまない。俺の顔は怖いだろう。怪しい者ではない。もう大丈夫だ。疲れてるだろうし、警備隊には俺が話しておくからもう帰っていいぞ。」


ガルドはスフラに早口にそう告げると、警備隊に数言話し、そのまま連れ立って去ってしまった。


「あ・・・」


お礼の一言も言い損ねてしまった。

王国軍副隊長である彼がわざわざ街を見回ることはないだろうから、休暇だったのかもしれない。

せっかくの休暇なのに面倒事に巻き込んじゃったのかも。

でもまあ、今は変装している最中だから、王城でスフラとしてお礼を言う訳にもいかないし、仕方ないか。


スフラはそう自分を納得させた。



-----



街での騒動から1週間の時が過ぎた。

スフラはガルドを目で追うようになっていた。


吸血鬼であるスフラは種族として魔法力や身体能力が高い。

そのため、王国軍にはたまに指導をしていたため、もともとガルドとは面識があった。

顔立ちが怖いと言われているのは知っていたが、長い寿命を生き、様々な人間と会ってきたスフラにとってそれほど気になることではなかった。

そのため、これまで意識はしていなかった。


しかし、街での騒動の時、一瞬辛そうな表情になった事が気になったのだ。


彼は私に「俺の顔は怖いだろう」と謝ってきた。

もしかしたら、女性に怖いと言われる事に傷ついているのかもしれない。

きっと、私も顔を見て怯えたと思ったのだろう。


スフラはそう思うと、お礼すら言えなかった自分が申し訳なくなった。


王国一の剣豪、鬼の副隊長、単騎で部隊を一つ壊滅させる実力や数々の功績から国王の覚えもめでたく、子爵家の次男ながら伯爵位を与えられたなどなど、噂でしか知らない相手ではあるけれど、もしかしたら、本当はもっと違う人なのかもしれない。


そんな思いからスフラはガルドに興味を持ったのだ。



-----



1か月ほどこっそりガルドを見ていた結果、スフラはガルドがとても優しく、おおらかで部下にも慕われている人物であることがわかった。



例えばある日、スフラが廊下を歩いていると、曲がり角でメイドとぶつかってしまったらしいガルドを見つけた。

どうやら間が悪いことに、メイドの持っていたバケツの水がガルドの服にかかってしまったようだった。


普通、王城のメイドは下級貴族や有力な平民の娘がなる。

伯爵であり、王国軍副隊長であるガルドに水をかけたのだから通常なら懲罰を与えられても仕方ない状況だ。

まして、鬼とまで言われるガルドである。

メイドは顔面蒼白で謝っていた。


そんなメイドにガルドは苦笑しながら、気にしないよう告げて、その場を去った。

まあその苦笑がメイドには恐ろしい笑みに見えたようだったが。



またある時、ガルドは部下と食事をしながら話していた。


「副隊長は顔が怖いんですよ。そんなんじゃお嫁さんできないんじゃないですか。」


「たしかに。男の俺でも怖いですもん。」


「そ・・・そんなにか?」


ガルドは食事から顔を上げた。


「いや、正直暗闇で見たら悲鳴あげるかもしれないですね。」


「俺はこの前の訓練で夜に副隊長見た時本気で鬼かと思いました。」


「そうなのか・・・」


本気で落ち込んだ様子のガルドに部下は少し笑った。


「ははは。ちょっと副隊長、そんなに落ち込まないでくださいよ。冗談ですよ。」


「でも、このままだと本当に結婚できないだろうな。そもそも女の人がまともに目を合わせてくれることの方が少ないからな。」


「ちょっと副隊長、元気出してくださいよ。たしかに副隊長は顔は怖いですけど、そこを抜きにしたらいい夫になれる人ですよ。」


「そうですよ。伯爵で国王様の覚えもめでたくて、将来的には元帥も夢じゃない。それに、性格もいいし、もう超優良物件ですよ。俺が女だったら副隊長のこと放って置かなかっただろうになあ。」


「そうか?」


「なんだかんだで言って俺たち部下としては、副隊長に幸せになって欲しいんですから、諦めないでちゃんといい奥さん探してくださいね。」


「やけになって、男を財布にするような嫌な女と結婚はしないでくださいよ。俺たち部下はみんな副隊長のこと慕ってるんですからね。」


部下はガルドを慰めながら、少し真剣な様子でそう言った。

ガルドはそんな部下に頬を緩めた。


「ありがとな。そうだな、お前らの言う通りやけになって結婚はしないよ。跡取りは養子を貰えばどうにかなるだろうしな。」


そう言うと、また食事を再開した。



他にも、迷惑をかけられても笑って受け流し、困っている人を見たら助け、部下とは気さくに話しをする。

スフラは、いつしかそんなガルドを見ていると、心が温かくなるような気がした。

そして、スフラはふと、これほど誰かに興味を持ったのは久しぶりだと思った。


私はこれまであまり誰かに執着するようなことはなかった。

だけど彼のことは何度も考えている。

彼のことを考えると、温かい気持ちで胸がギュッとする。


「ああ、これが恋ってやつなのか。」


そう自覚した途端、スフラの体が歓喜で溢れた。

長い寿命を持つ吸血鬼の中でも特に力が強く長生きなスフラは、いつしか別れの喪失を恐れて無意識に人と深く関係しないようにしていた。


でも、ガルドとはいつか別れが来るとしても一緒にいたい。

その優しさに触れたい。

彼の抱える孤独を私が癒してあげたい。


それはスフラにとって初めての感覚だった。

別れの時が来ても、ガルドと過ごした時間があればこれからずっと生きていけるとすら思った。



-----



そこからスフラは積極的だった。

もともとスフラは自由で自分の思いに忠実な気質だ。

さらに、ガルドの女性に対する臆病な様子から、積極的に好意を伝えないと察する事なんて出来ないだろうし、誤解して身を引きそうだと考えたのだ。


そうと決めたら、早速行動する。

スフラは最初に、街での騒動のことを説明して、感謝を伝えることにした。


「こんにちは。ハスタージュ様。今お時間よろしいですか。」


「こ、これはスフラ様。どのようなご用件でしょうか。」


「実は私、お礼を申し上げたいことがあるのです。」


スフラは街での騒動の件を説明した。


「だから、あの時はありがとうございました。」


「いえ、当然のことです。お気になさらないでください。」


ガルドは少し慌てた様子で答えた。

そんなガルドを見て、スフラは笑った。


「もしよろしかったら、ガルド様とお呼びしてもいいですか?」


「もちろんです。」


「ありがとうございます。それでですね、もし宜しかったらお礼にお食事をご一緒しませんか?」


「いえ、本当にお気になさらず。」


国の英雄の一人であるスフラからの思わぬ誘いにビックリして断ったガルドに、スフラは微笑みながらこう言った。


「私がご一緒したいのです。もしかして、ご迷惑だったでしょうか?」


「いえ、そういうわけではなく、誘っていただけて嬉しいです。あの・・・お恥ずかしい話、このように女性とお食事などというのは初めてでして・・・」


「そうだったのですか!嫌がられてしまったのではなくて良かったです。でしたら、次の休暇にお昼をご一緒しませんか?美味しいお店がありますので。」


「あ、ありがとうございます。それでは是非ご一緒させてください。」


「もちろんです。それでは詳しいことははまた後日。」


スフラはそう言うと、笑顔でその場から去った。

そして急いで自分の部屋に戻った。


「ふー。ドキドキした。一緒に食事かあ。楽しみだな。」


そう言と、スフラはクッションに顔を埋めた。



一方ガルドは、まだ混乱していた。


こんなちょっと助けただけで女性と食事なんて・・・どうすればいいんだ?

ちょっとまて、食事に行く服装は?

そんないい服持ってないぞ?

食事のマナーとかちゃんとできる自信がない。

そもそもあんなに綺麗な女性と目を合わせられる自信もない。

あ、スフラ様は綺麗というよりかは可愛いタイプ・・・じゃなくて!

本当にどうしたらいいんだろう。


ガルドは自分の副隊長室に戻り、部屋の中をウロウロしていた。


スフラ様と食事なんて嬉しい。

正直めちゃくちゃ嬉しい。

スフラ様は俺とも目を合わせてくれる数少ない女性だしな。

それがこんな誘いをされたら、俺・・・


「落ち着け、俺。ただのお礼だからな。ただのお礼だぞ。落ち着け・・・」


ガルドはそんなことをぶつぶつと呟きながら部屋を歩きまわっていた。

ガルドが部屋に入ってきた隊長に根掘り葉掘り聞かれて、結局全て吐かされるまであと30秒。

でも、からかわれながらも色々とアドバイスを貰えたガルドにとっては結果オーライだったのかもしれない。



-----



食事の日になった。

ガルドは待ち合わせ時間の1時間前に到着していた。


今日の服装は本当にこれで大丈夫なのか?

まあ全部隊長のアドバイスなんだが。

あの人、いつの間にか部下にも話していたし、そのせいで朝から部下に「いよいよ今日ですね」とか「頑張ってください」とか言われたし・・・


ガルドが待ち合わせ場所でとりとめのないことを考えていると、急に後ろから声をかけられた。


「こんにちは。おまたせしてしまってすみません。」


「いえ!俺が早く着きすぎただけで・・・1時間も早く到着しちゃったんですよ。」


「お早いですね。もしかして、そんなに楽しみだったんですか?」


待ち合わせ場所に現れたスフラがいたずらっぽく笑ってからかった。

ガルドは真っ赤になって口ごもった。


「いえ、その・・・」


「ちなみに私はめちゃくちゃ楽しみで昨日なかなか眠れませんでした。」


「えっ!それは・・・」


「ガルド様も楽しみにしてくれていたなら嬉しいです。」


「俺も・・・楽しみでした。」


スフラは笑みを深めた。


「それじゃあ行きましょうか。」



食事は楽しく進んだ。

落ち着いた雰囲気のレストランにガルドはリラックスでき、会話も弾んだ。


食事が終わると、2人はそのままショッピングをした。


そろそろ帰る時間という夕方になり、スフラがガルドを見つめてこう言った。


「今日はとても楽しかったです。もしよろしければ、またお食事しませんか。」


ガルドは驚いた。

お礼としての食事だろうから今日限りのことだと思っていたからだ。


「ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。」


「では・・・」


「でも!でも、これ以上誘っていただくとなると・・・すみません、こういったことに経験がないので期待してしまいます。なので、そういうことではないのでしたら・・・」


「してください。期待、してください。」


「え・・・」


スフラは少し頬を染めてこう言った。


「私はガルド様のことが好きなのです。」


「それは・・・」


「もちろん恋愛的な意味でです。」


ガルドは思わぬ言葉に真っ赤になった。

そんなガルドを見てスフラは微笑むとこう続けた。


「私とガルド様は種族も寿命も年齢も違います。困難はたくさんあるでしょう。でも、そんなこと関係ないと言えるくらいに好きです。ガルド様が好きです。でもガルド様は私のことをきっと知らないと思います。だから返事はまだいいです。もっと私のことを知って、そしたら返事を貰えると嬉しいです。」


「俺も、スフラ様のことが・・・」


ガルドは答えようとしたがそれを遮ってスフラが聞いた。


「本当にそうですか?ガルド様はあまりきちんとお話する女性がいなくて私が気になってるだけじゃないですか?それに、私はまだガルド様にちゃんとお話ししなければいけないことがあります。ギルバートのことも・・・だから、今度返事を聞かせください。」


「わかりました。」


ガルドは頷いた。


「それじゃあ、これからもっと私を知ってもらうよう頑張ります。グイグイいくから覚悟してくださいね。寿命のことが不安でもそんなこと関係ないって思うくらい惚れさせちゃいます。」


わざとらしいほど可愛くウインクしてみせたスフラに、ガルドはまた真っ赤になった。

このまま落とされる、そんな予感がした。



〉(全く機能しなかった)世界設定


人族6 獣人3 エルフ0.6 龍人0.2 吸血鬼0.2

現在は亜人迫害なし


人族

身体能力、魔法力はそこそこ

繁殖能力が高い

寿命は60年くらい


吸血鬼

高い身体能力と魔法力を持つが制限が多い

特に太陽の元では能力が制限される

日中2/3 正午1/2

血は栄養価が高いが不味いので好まない

髪は銀髪の者が多く目が赤眼で牙がある

寿命は500年くらいだが強い個体はめちゃくちゃ長生き

子供ができにくい



〉登場人物


◇いにしえの魔女

スフラ・シャリーゼ


吸血鬼 女性 532歳


銀髪 ロング 赤眼 スタイル抜群 かわいい

自由で明るく、積極的

吸血鬼でも実力は最高位レベル

おそらく寿命はとても長い


建国当時からシャリーゼ王国を支える

吸血鬼の地位向上のため初代国王の側室となった




◇シャリーゼ王国軍鬼の副隊長

ガルド・ハスタージュ


人族 男性 36歳 伯爵


黒髪 短髪 灰眼 凶暴な顔立ち 高身長

優しくおおらかで懐が広い

部下に慕われている


剣の腕は王国一

女性に怖がられる凶悪面で恋人はできない

実力はあるので縁談は来るが相手の女性が怖がってしまうので諦めて断るようになった

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここからどれだけ押せ押せになるのか気になりますね。
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