表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/28

09 俺の過去も面倒

 怪我も治り、包帯も取れたトラジロー。

 だが右耳が半分無く、尻尾も途中で曲がっている。

 治す事も出来るのだが、トラが頑なに拒否したのだ。


「オイラはこの耳とシッポを見るたびに弱いオイラを思い出してがんばれるにゃ!」


 強いな…… これは化けるかもしれない……

 だが病み上がりだから、軽めの散歩と勉強が中心である。


 という訳でトラはこの世界の文字の書き取り。

 俺は隣で先生しながら、お勉強の教材作り。

 ハンゾウは日課の畑の手入れ。


「んー…… にゃふにゃふ…… んー……」


 勉強を嫌がりながらもちゃんとやるトラの姿が微笑ましい。

 その時プリントを見たままのトラから声がかけられた。


「あるじはなんでこの世界に来たにゃ?」


「んー? この世界に来たのは偶然だよ。 母ちゃんにケツ蹴っ飛ばされてこの世界に飛んできたんだ。 ハンゾウと一緒に」


「ケツ蹴られると別世界飛ぶんかにゃ!? わけわからんにゃ!?」


 大丈夫だ。 俺もわけわからん……


「じゃ此処に来る前はどんな生活してたにゃ?」


「うーん。 そうだなぁ……」




 無数にある世界を束ねる存在。 それが最高神。 無から生まれた1番最初2柱の神であり、夫婦神でもある。

 その最高神の2柱から生まれた3番目の子。 それが俺ハチマンだ。

 兄と姉が居り、5人家族だが、俺が生まれた時には兄姉は自立し、すでに自分の世界を持っていた。

 だから自宅に居たのは父母俺の3人。


 父ちゃんは銀髪でヒョロっとしたメガネカマキリ。 創造を司どり、何でも作るが危ないのも作る、何時も白衣を着て薬品臭かった……

 母ちゃんは金髪美人のヤンキー。 口より手が出るタイプ。 破壊を司どり、皆から姐御様と呼ばれる、サラシに特攻服が正装……

 そんな家庭で育った俺は、物心ついた時の1番最初の記憶が、

 母ちゃんにぶっ飛ばされて吹き飛ばされた記憶。


「ちょっと待つにゃ! いきなりデンジャラスにゃ!」


 いいよーナイスツッコミだ! トラさん!

 小さいウチはあれが普通だと思ってたんだ。

 殴る蹴る投げられる吹き飛ばされる…… 「全部修行だ!」って母ちゃんが言ってたし……

 まぁ痛かったけど、どんな怪我でも1分もしないで治ったしね。

 それが3千歳くらいの時かな……


「何3千歳って…… 聞き間違いかにゃ……?」


 初めから神で生まれた者の成長なんてそんなもんよ。普通人間の約千倍だな。

 んでそんな修行を毎日12時間。勉強を3時間、3千歳から6千歳まで毎日。

 ちなみに勉強は父ちゃんが担当。

 4千歳くらいの時かなぁ。 1度余りに痛くて反撃して母ちゃんにパンチ当てたら吹き飛ばしちゃってな。

 それから修行の激しさが増したんだ……

 当てると修行の勢いが増すのを理解したからその後は攻撃を避ける、受け流すに徹したんだ。

 そんで6千歳の時、出会ったのがミロク。

 母ちゃんが総長してるチームの特攻隊長の子とか言ってたけど当時は何言ってるのかサッパリだった。

 ミロクも6千歳くらいで同じような修行をミロクの母ちゃんにさせられてたんだって。

 その頃かな?兄ちゃんの世界に遊びに行って瀕死のハンゾウを眷属にしたのは……

 あ、トラも眷属になってるから不死ね。身体の成長も1番力が出せる年齢の時に止まるからヨロ。


「にゃ! そんな大事な事今サラっと言うかにゃ?!」


 ハハハ。 ミロクもハンゾウを羨ましがって眷属を捕まえてきたっけ…

 イワトビペンギンで名前はトシゾウ。




 それからの修行はミロクと一緒で苛烈を極めた。

 その頃からかなぁ、ミロクと逃げる準備始めたのも。

 少しずつ家にある食料をくすね、

 小遣いを貯めてサバイバル用品を買い、

 父ちゃんを丸め込んで色んな技術を学んだ。

 料理、農業、鍛冶、木工、裁縫、錬金、創造……

 寝る間も惜しんで覚えた。

 父ちゃんを占領しすぎだと母ちゃんに殴られた……

 兄ちゃん姉ちゃんも心配してくれて、色々な物をプレゼントしてくれた。

 それは漫画やらアニメやら玩具やらゲームやら家電やら車やら武器やら銃器やら……

 兄姉に甘え過ぎだと母ちゃんに殴られた……




 まぁそんな心配も杞憂に終わる。

 1万歳を超える頃には俺もミロクも母ちゃん達と互角に戦えるようになっていた。

 体力だけなら上回ってるかもしんない。

 だって母ちゃん達、毎日タバコスパスパ、ビールグビグビだもの……

 この頃から、いびり甲斐が無くなったからなのか修行が少なくなってきた。

 だが知らなかった…… 街では姐御様と互角の子供という噂が流れていた事を……


 空いた時間をどうしようか……

 修行漬けの毎日だった俺等は遊びを知らない…… 兄姉から貰った物も収納空間に入れっぱなしだった。

 仕方なしに、最高神所有の膨大な量を誇る書庫に入り浸り、本を読み漁った。

 絵本から禁書までありとあらゆる物を読みまくった。


 そんな時だ。ミロクから相談を受けた。

 なんでもミロクの母ちゃんが何か企ててるらしい。


『アタイの力も56億年後にはピークになるからな! でも総長を倒すには多分力が足りねぇ。 そこでミロクのヤツに他の世界から大量に魂魄(タマ)を持って来させてアタイの糧に出来れば楽勝って事よ! ギャッハハハハ!』


 友人と自宅で酒飲みながら話してるのを聞いたらしい……

 別に俺の母ちゃん倒すとかどーでもいいんだが、下らない事で働かされるのが嫌だ。と

 確かにあんな母ちゃんズの命令で働くのは嫌だな。

 対応策を考えるべく、議論に議論を重ね、書籍を読み漁った。

 結果、余計な魂魄は強制的に回収・転生させればよくね? になった。


 そこで2人で作ったのが、異世界エンマ。

 暗闇に光の渦だけが有る世界。

 その光の渦の中心に巻き込まれるのは、無限の世界で亡くなって45日以上経った縛りの無い全ての魂。

 縛りとは強い思いや恨み、レイスなどのアンデット化、世界に必要とされている魂などなど。

 渦に飲まれた魂は、功罪を数値化され上位種へ、下位種へ、消滅と決定され、転生の魂は渦下から吐き出されそれぞれの世界へ飛んで行く。

 この異世界エンマは他の神々に絶賛された。

 自己で転生システムを持ってる世界は少なく、長時間放置してアンデット化する事例が増えていたからだ。

 珍しく母ちゃんにも褒められ、2人揃って頭を撫でられた。

 ミロクの母ちゃんだけは苦々しい顔してたけどね。ざまぁ!

 この時約1万3千歳である。


「よく分からないにゃふ…… でもすごい事したのは分かったにゃ。 後やっぱ年齢おかしいにゃ……」


 年齢は気にするな。

 その後も書庫に篭り続け、本を読み漁った。

 だが読んで行けばそのうち終わりが来るもので……

 異世界エンマから3千年後、ほぼ全ての書籍を読み終えてしまった。

 さあどうしよう…… ミロクと出した結論は…… 遊ぶ。

 未知の領域である!

 何をすればいい? ハ! 兄姉から貰った物があるじゃないか!

 片っ端から遊び尽くしてやろう!

 俺、ミロク、ハンゾウ、トシゾウは俺の部屋に篭り、ニートとなった。

 ミロクはもう2千年ほど自宅に帰っていない。

 自分の母ちゃんの事を


「うぜえキモい化粧が臭い」


 って言ってた……




 そして…… ハマった。 ドハマりした。

 漫画を読み、アニメを見て、ゲームで熱狂し、皆で大笑いした。

 こんな楽しい事があったのか…… と。

 そして、どうやら街にも娯楽が溢れてるらしい。

 そしたら行くしかないよね!

 皆で繰り出したさ!いざ街へ!

 そして、街1番の繁華街でる大通りに出たらさ……

 大勢の人が左右に分かれたのさ……

 顔を向けると皆背けるのさ……

 そのうち怖い顔した兄さん達がペコペコと頭を下げて挨拶してくるんだ……

 わけわからないから普通に挨拶で返すんだけど……

 そして店とかに近づこうとすると、シャッターが閉まるんですよ……

 余りにも理解出来ないので、怖いお兄さんを捕まえてどういう事かを聞いたのです。

 お兄さん曰く。


「アイツ等はアタイ達の後継者だ! 力も互角以上だし、頭も良いんだぜ! ぎゃははは!」


 母ちゃんズが言いふらしてるらしい……

 だから街の人は、悪名高いレディース族の次期総長なんだと……

 その若さで姐御様と互角、しかも頭も切れる。 恐ろしい漢なのだと……

 この街1番の不良であると……


 絶望した…… 俺等が一体何をしたというんだ…… エンマの時は褒めてくれたじゃないか……


 トボトボと家に帰る。 皆暗い顔だ……

 そして、引き篭もった……


 どれくらい籠ってただろう。

 もう面倒くさくて年齢も数えるのを止めていた。

 そして皆で人生〇ームをしてた時、

 スパーン! と部屋のふすまが開いた。


「テメエ等! 不良になるってどーゆーこった!」


 不意打ちだった。

 浮かしたケツを母ちゃんに思いっきり蹴られ、ハンゾウと共に姉ちゃんに貰った大きなクマのぬいぐるみを巻き込んで壁を突き抜けた。

 そしてミロクが見事なアッパーを喰らい、トシゾウと共に別方向へ飛んでくのが見えた。

 そして俺は音速を超え、光速も超え、次元の壁も抜けこの世界に降り立ったのだ……


「俺等が一体何をした……」




「むずかしくて良くわからないけど…… あるじの母ちゃんには絶対会わないにゃ!」


お読みいただきありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ