表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

08 名前が変わりました

 長い事話終わったケットシーは「ふう……」と1つ溜息をついた…… みたい……


 何故みたいなのかと言うと……

 溢れる涙で、前が見えないから~


「うをおおおおおおおおおおおおん! よくがんばったあああああ!」


「此れからは某がついてるでござるうううう! うわぁあああああああん!」


 俺とハンゾウは同時に抱き着き、全力で撫でまわし、力の限り頬ずりした。


「にゃ! 止めるにゃ! 逆毛で撫でるにゃ! スリスリするにゃ! は、鼻水つけるにゃ! いーやーにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」  



「ホラ! さっさと拭くにゃ!」


 俺は今、お湯に濡らしたタオルでケットシー様のカペカペになった所を丁寧に拭いております。

 ハンゾウさんは俺が吹き終わった所を優しく乾拭きし、丁寧にブラッシングしております。

 そんなお互いの顔には5本線の引っ?き傷があります。地味に痛いです……


「ホラ! 尻尾のトコロもカピカピにゃよ! 手を休めるにゃ!」


 まだまだ終わりそうもありません……




「ふう…… えらい目にあったぜ」


「それはオイラのセリフにゃ!」


 ウガーっとするケットシー。 中々良いツッコミ要員である。

 思わず親指を立て、いいねポーズ。 カプっと噛まれた。解せぬ……


「取り合えず、チミの名前を考えねばならんな」


「にゃふ!? オイラ名前変えるにゃ?」


「何時までも君とかケットシーとか呼ぶのも可笑しいでござろう? それに主も某も、君が嫌がってる昔の名を呼ぶ気なんてサラサラ無いでござる」


「折角の新天地だ。 新しい名前で再出発しとけ」


「にゃ! じゃあオイラは、アレキサンダー・ボナパルト・ペンドラゴンがいいにゃ!」


「詰め込み過ぎだ…… どんな英雄パレードやねん……」


「ビックリするほど名前負けしてるでござる……」


「カッコイイにゃ」


「「却下」」


 ずーん…… と暗い空気を纏い、項垂れるケットシー……


「んーそうだな。 ま、考えてはいたんだ」


 暗い表情で俺を見つめるケットシー。

 どんなけショックだったんだよ。 そんな名前付けたら大きくなった時絶対後悔するぞ。


「チミの名前は…… 【トラジロー】はい拍手!」


 俺とハンゾウで拍手する。 トラジローはキョトンとしている。


「どういう意味にゃ?」


「虎って知ってるか?」


「知らないにゃ」


「この世界には居ないのか? 虎っていうのは黄色と黒の縞模様でネコ科最強の生き物だぞ」


「兄ちゃホントかにゃ?」


 頷くハンゾウっておいぃぃ…… 信用してねぇのかよ!

 フフン!と上から目線で俺を見るハンゾウ…… ぐぬぬぬぬ……


「オホン!ジローは次男って事だ。 この家の長男がハンゾウ、次男がトラジロー。 これでお前らは兄弟だぞ」


 キラキラした目でハンゾウを見つめるトラジロー。


「やったにゃ! 兄ちゃ! オイラトラジローにゃ! 弟になったにゃ!」


「良かったでござるなぁ。 これからもよろしく頼むでござるよ。 弟よ」


 トラジローの頭を撫でるハンゾウ。 その手にじゃれるトラジロー。 只見てるだけの俺……

 別に…… 悲しくなんてない……


 取り合えず決まったのは名前だけ。

 特に急いで決める事も無いんだが、只此処に住むだけでは何か勿体ない。


「トラは何かしたい事ないのか? 物作りしたいとか。 勉強したいとか」


「オイラぶきっちょにゃ。 頭もよくにゃいにゃ。 後強くなりたいにゃ!」


 強く、強くねぇ……


「それは前居た群れに思うトコロが有るからとか?」


「会えばギャフンとしてやりたいとは思うにゃ。 でもどうでもいいにゃ。 それよりもオイラ、ドラゴンと戦いたいにゃ!」


「敵討ちでござるか?」


「違うにゃ! 父ちゃんは戦士にゃ! せーせーどーどーと戦ったにゃ! だからドラゴンにうらみなんて無いにゃ!」


「ドラゴンはほこりたかいにゃ! 負けた父ちゃんに『治療せよ』とか、カッコイイにゃ!」


 お前が治療してやれよってチョット思った。 だが言わない。 大人だから。


「だから知りたいにゃ。 父ちゃんがさいごに戦ったドラゴンがどんなけ強いのか…… おぼえてるなら、その時のことを聞きたいにゃ」


 なるほど。子供らしい純粋な憧れか。


「ドラゴン相手じゃ修行いっぱいしないとな。 後勉強も」


「にゃふ…… 勉強きらいにゃ……」


「でも勉強出来ないと強くなれないでござるよ。 本当の強者は頭が良いでござる。 色んな事を予測したり、効率良くしたり、いっぱい考えているでござる」


「そうにゃのかぁ…… うんオイラがんばるにゃ!」


 そう言って撫でるハンゾウの手にじゃれつくトラ。

 もういいです。 兄弟仲良くやってください……




「そいや、勉強の教材ってどうしよう……」


「主が異界語録でも付与してあげて、漫画でもアニメでも見せればいいでござらぬか?」


「いやいやいや。 それ勉強しない子供が出来上がるパターンじゃね?」


「苦労しか知らない無垢な子でござるから、色々と興味を出させるのが良いのでは?」


「ふむ…… むずいな、教育って……」


「時間は一杯あるでござるから、気長にやるでござる」


「そういや…… ハンゾウも漫画アニメ漬けの駄目な子だったような……」


「今や立派でござろう?」


「………」




 明くる日、居間でトラが、DVDのアニメをじっと見ていた。

 ハンゾウが準備したようだ。

 そして、画面から目を離さないトラさんが、


「あるじー。 オイラこんな風になりたいにゃ」


 そこに映っていたのは、銀河よりも大きい超巨大ロボだった……


「それは無理ぽ……」


お読みいただきありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ