05 罰とか考えるの面倒
「はーい注目! これよりナディアさんより勇者達に対する罰を発表いたしまーす」
メチャメチャだった部屋は、ゴミを壁際に動かし、取り合えずスペースを作った感じ。
大人のトンチンカントリオと真っ盛り勇者チームは揃って正座中。
悪い事してない巻き込まれただけのマーサさんは隅っこで椅子に座っていただいてます。
「取り合えず、称号剥奪は延期する事としました」
その言葉にホっと安堵する真っ盛りチーム。
「ですが、1年です。 今現在勇者達の平均LVが24ですので1年で50まで上げてください。 出来なければ剥奪します」
「「「「そんな!」」」」
「無理なら言って下さい。 今からでも剥奪致しますので」
「ちょっと! 横暴じゃない! 1年で50なんて無理に決まってるわ!」
ビッチ魔法使い…… 神に対しての言葉遣いがなってねぇなぁ……
「自業自得じゃありませんか? 普通の冒険者が1年で約10上がると言います。 あなた方は称号を与えて2年経ちますが、10すら上がってないじゃありませんか」
「ですが! 1年で50迄なんて休む暇も無いじゃないですか!」
「今までたっぷりと休んでたではありませんか。 そもそも私はこの場での剥奪予定だったのです。 ハチマン様の「1年間の猶予」という言を聞き入れただけに過ぎません」
「…… ナディア様…… せめてもう少し時間を、もしくは僕の…… いえ。 聖剣を貸してはいただけませんか?」
お、真っ盛り君少しは考えて話すようになったか? でもポロっと出ちゃ駄目だがな。
「なりません。 1年頑張るか、今此処で諦めるか、2つに1つです」
「「「「……………………」」」」
「そもそも、勇者・聖女・大魔道・剣聖。これらの称号は、魔王や邪竜の存在しない今、この世界に暮らす様々な種族、人々に安寧と慰撫を。時々現れる大型の魔獣に対する戦力の為。 大型の魔物は高LVな冒険者が力を合わせれば対処出来ますし騎士団も居ますのでなんとかなります。 要するにぶっちゃけて言えば今の世に必要な称号でもないのですよ」
キレてるなぁ…… 美人が怒ると怖いな……
「で、どうしますか? 今此処で決めなさい」
「……。1年間頑張ります…」
まぁそうだよね。
1年しっかり鍛えて、仮に50ならなくて称号無くなっても、そこそこなLVになってるハズだし冒険者として食っていけるだろう。
「わかりました。 1年頑張りなさい。 後、ハチマン様よりプレゼントがあるそうですので、勇者と仲間は目を瞑りなさい」
素直に言う事を聞く真っ盛りチーム。
特に声を掛けるでもなく、無言で真っ盛りチームに呪詛を掛けて行く。
クックック…反応が楽しみだ。 ナディアさんも悪い顔になっちょる……
「えーでは、今のプレゼントの説明をしたいと思いまーす。 簡単に言えば、君等が盛るとピーとかピーに激痛が走ります。 以上です」
「「「「は?」」」」
「ん? 分からなかった? だーかーらー!君等が盛ってムラムラしたりするとピーとかピーが超痛くなります! 期間は1年です!」
「「「「えええええええええええええええええええええ!」」」」
「酷い! 酷すぎる!」
「ふざけんじゃないわよ! さっさと解除しなさいよ!」
「無茶苦茶です! ナディア様!お助け下さい!」
「断固抗議する! これは許される行為ではない!」
うわぁ。すげえ抗議の嵐だ。
そんなにヤリたいかお前ら……
「1年頑張るんだから疲れ果ててそんな気分にならんだろう? だから気にするな! 俺も気にしない!」
「そういう事じゃなくて! 男には生理現象というモノがぁ!」
うん。あるね。頑張れ……
「アンタ馬っ鹿じゃない!? もうなんなのよぉ!」
もう口の悪さが引くレベル……
「酷すぎます! お父様! お助け下さい!」
貴方の父さんは顔背けて涙流してますよ。
「私達には休息すら与えぬと言うのか!」
盛るのは休息じゃないから。 体力使うよ?
まぁ色々言いたい放題言ってるけど…… まるっと無視しますがね。
「ナディアさん終わったよー」
「はい。 お疲れ様でしたハチマン様。 では勇者一行はもう用は無いので戻りなさい。 向こう1年間、考えて行動するように!」
そしてナディアさんと共にギャーギャー騒ぐ真っ盛りチームを蹴るように扉の向こうに追い立てる。
全員を廊下に追い出し扉を閉めカギを掛ける。
と同時にナディアさんが防音結界を張る。
「ノック音とか騒ぎ声とか五月蠅いですからね」
どうやらナディアさんは温情を掛ける気は一切無いようだ。俺も無いが。
「さて、次は貴方達です」
ビクっとする大の大人3人。
「わ、私達も罰を受けるのですか…?」
「当然です」
キッパリと言い切るナディアさん。
でもコイツ等、俺が脅してあるよ?
「ハチマン様がお許しになられても私が許せません! ハチマン様を利用するなど!」
「ま、まさか同じような罰でございますか!?」
「ひっひぃぃぃぃぃぃぃ!」
「お許しをお許しをお許しをおおおおぉぉぉおお!」
「貴方達の罰は決めてあります! さあ有難く受け取りなさい!」
温かい光が3人に降り注ぐ。
それはまるで祝福のような、穏やかで心が温かくなる光のシャワー。
だがその光が消えた時、ナディアさんの恐ろしい罰が牙を剥いた。
頭を下げ、祈り、許しを請う3人。
その3人の、頭頂部の、髪の毛が、大量に、ゴッソリと抜け落ちた。
3人共、見事なザビエル頭である。
暫く茫然と落ちた髪の毛を見る3人。
そして我に返った彼等は、部屋に有る姿見鏡に殺到する。
「────!? ────!」
ペチペチと頭を触り、これが現実であると確信した彼等は……
泣いた…… しかもわんわんと泣いた…… 叱られた子供の様に泣いた……
まぁ神罰だ。諦めろ。
ちなみにマーサさんは部屋の隅で椅子に座り、手でお腹を抑えながら俯き、震えていた。
「この呪詛は1年間です。十分反省なさい! 因みに王冠以外の被り物は吹き飛ぶようになってます」
更なる絶望が3人を襲う……
ナディアさん…… アンタ鬼や……
「さて、スッキリしました! ハチマン様。この度はご迷惑をお掛けし申し訳御座いませんでした……」
「いあいあ、たいした事じゃないし気にしないで」
本当に謝られる事じゃ無いんだけど…… 俺は他人様の異世界で大きい顔したくないだけなんだけどなぁ……
なまじっか、強い家系に生まれたもんだから周りが気を遣うと言うか、腫物を扱うみたいと言うか……
あーあ、面倒臭い……
「んじゃ俺、島に帰るね。 マーサさんもまたね」
「私も帰ります。お疲れ様でした」
ペコリと頭を下げ、転移してくナディアさん。
マーサさんも椅子から立ち上がり、頭を下げている。
ただ声は無く、身体は小刻みに震えている。
王に怒られないでね。
そして俺も帰るべく、その場から姿を消した…
その日、夜の王城では、王の執務室でそれはそれは、悲しそうな鳴き声が一晩中聞こえてきたと言う……
そして勇者とお仲間が住まう王城の一角では、凄まじい4つの絶叫が響き渡り、警備兵が部屋の中に突入すると勇者とお仲間達が股間を両手で抑え、口から泡を吐きながら気絶していたそうな……
お読みいただきありがとうございました。