02 こんな女って面倒
もう既に真っ暗になった街道を横に逸れて森の中を失踪中。
途中、魔獣なんかにも出くわすがソニックブームで吹き飛ばす。
そして気配を辿ってハンゾウの元へ。
「待たせた」
「遅かったでござるな。 やはり助けた方に絡まれたでござるか?」
「全くもってそのとーり…… 超うぜぇ……」
「プークスクス。 豚貴族でござったか?」
「ムッ いやお嬢さん。 お嬢さんは可愛かったけどな、騎士がアホでな……」
「なるほど。 ホレたでござるか?」
「うんにゃ。まったく。 んでアレが盗賊のアジト?」
「そうでござる。 気配では見張り含めて10名程と攫った女共がこちらも10名ほどでござるな」
「んじゃちゃちゃっとやりますか。 こんな面倒な依頼さっさと終わらせたい」
「で、ござるな」
フードを被り直し、室内だと棒は向かないので小さい武器を。
取り出したるは長さ20cm程の2本の棒。 また棒かよって言うな……
持ち手5cm程は白くそれ以外の部分は1つは赤、もう1つは青である。
これ、昔オタ芸を見て思い付きで作ったサイリウムビット。
ビットと言うからには飛びます。 ビュンビュンと。
そして色に合った属性でビーム出ます。
手に持ち、魔力を纏わせれば属性剣のように斬れます。
そして何より、光ります。
「またそのヘンタイ武器でござるか……」
「ヘンタイ言うな。 格好いいじゃないか!」
まったく…… コレの良さがわからんとは……
「まあいい。 いこか?」
「御意」
洞窟の入り口まで一気に加速する。
ハンゾウの羽にスパッと首を刎ねられ絶命する見張りの2人。
そのまま止まることなく突入する。
ハンゾウは女共の救出に、俺は他の盗賊を滅しに二手に分かれる。
「ぐぎゃあああああああ」
「何だキサマは!?」
「ギャアアアアァァァ……」
相手が少ないせいか戦闘はあっけなく終わる。
人目が無ければこんな外道、生かしておく必要ないからね。
んで、1番奥にお約束通り宝物庫がある訳でして。
勿論カギが掛かっておりますが…… サイリウムでピチュンします。
「おじゃましまーす」
ギィィィィっと鳴る鉄の扉を開けて、中へ侵入。
結構大きい盗賊団だけあってため込んでるね。
「さて、目当ての物は…… お、あったあった」
そこに有ったのは一振りの剣。
青銀に光輝くこの剣、実は聖剣であり、勇者の剣である。
実は馬鹿勇者が野外で女魔法使いとアッハンウッフンしてる最中、盗まれた物である。
それを、取り戻してくれと主神に、そして王と言う糞ジジィに泣いて頼まれて探していたのだ。
盗賊に盗まれた、しか情報の無い糞ガキ勇者をボッコボコにしてから始めた盗賊狩り。
14件目にしてやっとビンゴである。
取り合えず、聖剣を手に持ち、残りの財宝も収納空間に入れる。
綺麗サッパリとしたトコロでハンゾウの元へ。
牢の前まで来ると、牢番だったであろう男が1人事切れていた。
牢に目を向けると数人の女共が怯えた目で此方を見ていた。
フードを被った怪しい人が現れて怯えてるのか?そりゃ怯えるわな。 俺だって逆の立場なら怖すぎるもの。
でもハンゾウが見当たらないな?何処だろ?
牢を華麗にスルーして奥に進むと…… 居た。
突き当りに有った小さな檻の中で何かに必死に回復魔法をかけていた。
「猫か? いや…… ケットシーか…… 酷い怪我だな……」
「瀕死でござった…… まだ死ぬには早い! でござる……!」
懸命に回復魔法をかけ、声をかけ続けるハンゾウ。
「ハンゾウ…… 生かしたいんだな?」
返事は聞かない。 分かっている。
俺はケットシーに向けて上級神以上が持つ権限の1つ、強制眷属契約魔方陣を展開する。
「主…… よろしいのでござるか……?」
「ハンゾウが助けたいと願い、傍に俺が居た。 考えるまでもないさ」
魔方陣が強く光りだす。
強制眷属だけに相手の同意も必要無い。
契約はケットシーの身体が治ったらまた選択させればいい。
どんどんと光が強くなる。そして俺とハンゾウの視界は白一色に染められた…
灰色虎柄のケットシーのお腹が呼吸に合わせて膨らんだり、萎んだり。
「如何やら安定したみたいだ」
「主。 かたじけなく……」
「なぁに、これも縁ってヤツでしょう」
ケットシーを撫でる。温かい。
契約した事で俺の体力、魔力の数%を受け取る事が出来る。
これで生き長らえる事ができるだろう。
「先に拠点、帰っとくか?」
「そうでござるな。 ゆっくり治療するでござる」
檻から出てきたハンゾウ。
ピカっと光ったと思ったら其処には和装で長身の色男……
180を超える身長に長めの青い髪を首の所で一纏めにし、藍の着流し姿のイケメン…… ケッ
まるで鳥の足のような手から生えるその爪は、ケットシーが捕えられてる檻の鉄格子を容易く切り落とした。
ハンゾウは優しく両手でケットシーを抱き上げる。
「ではお先に戻るでござる」
ケットシーを抱えたハンゾウの姿が歪み、ぼやけて、そして消えた。
「……… なんだろうね…… ハンゾウがあそこまで生かそうとしたケットシーか……」
頭をガシガシと掻く。
ま、仕事しましょうかね……
女共が捕まってる牢の前に到着~。
例のごとく怯えられております。
相変わらずやりずらいたりゃありゃしない。
「はーい、注目。 これから全員助けます。 が、指示に従う事。俺に話しかけない事」
牢の鍵をサイリウムで壊して中に入る。
1人1人にハイポーションの瓶を渡し、飲ませる。
飲んで怪我など無いか確認し、全員を洞窟内にある広い居間みたいな所まで移動させる。
そして居間の中央に、他の者に見えないよう、転移用の魔法陣を展開。
「全員居るな。では全員部屋の中央に集まって、これで目隠しをしてもらう」
全員に目隠し用の布切れを配ってゆく。
「あの……」
女達の中で1番大人っぽい女が話しかけてきた。
「俺に話しかけるなと言ったはずだ」
「う…ごめんなさ「ちょっと!」……」
なんか勝気そうな赤髪の少女がキレてるっぽい。
また面倒臭い展開なんだろうか…… もうサクっとやらせてくれよ……
「そんな言い方しなくてもいいじゃない! 私達は捕らわれて不安だったのよ!」
要するに私達に気を遣えってか?
「言っておくが……」
そう言って女達を見回す。
「俺の依頼に捕らわれた者達の救助は入っていない。 お前等を助けたのは完全に俺の善意であると。そして人の生活圏まで送るつもりだが、手の内を曝すつもりは無い。 だから面倒な事はするな。黙って指示に従え。 納得できないならこの部屋から出るがいい」
「な! アンタに優しさは無いの!」
「牢から出して貰ってハイポーションまで貰った。 人の生活圏まで送ると言ってるのに文句を言い作業を遅らせる。 お前何様だ?」
「クッ……」
悔しそうな赤髪女。
助けられた立場なのに何文句言ってんだか……
蝶よ花よって、上げ膳据え膳で持て成せってか?アホか!
「10数えるまで待ってやる。 納得出来ない者は部屋を出ろ。 此処から抜け出したいなら部屋の中央で目隠しをしろ」
目を閉じ、声に出して数を数える。
移動する足音は聞こえない。
そして10数えて目を開ける。
其処には、捕えられていた女達が目隠しをし、寄り添うように立っていた。
ちなみに赤髪はきつく手を握りしめ、プルプルと震えていた。
多分コイツとは一生分かり合えないわ……
もう面倒になったので、女達に声をかける事も無く、いきなり転移した。
お読みいただきありがとうございました。