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01 盗賊とか面倒

所謂逢魔が時。のちょっと前。

 甲高い金属のぶつかる音が聞こえる。

 怒声、叫び声、馬の嘶き、音量と気配からすると盗賊にでも襲撃された感じか…


「チッ メンドクセエな……」


「でも主、目の前で悪人に誰かが殺されるのは放って置けないでござろう?」


 相棒のハンゾウの言う事が当たってるのがムカつく。

 誰だって周りで殺しがあったら気分悪かろう?ましてやその悪人が我が物顔でのさばってたら飯も不味くなるってもんだ。


「ハンゾウは上空から盗賊方の弓、魔法、伝令それぞれの担当が居たら、まぁ自由に。後アジトが分かれば頼む」


「御意」


 飛び立つ青いセキセイインコ。

 あれがハンゾウである。本来は200mを超える金色の鳳凰なのだが、その姿で人前に出るとパニックになるので。


「さて、やるか」


 外套のフードを深めに被り、180cmほどの木の棒1本片手に乱戦の中に突入する。


「ちょっと邪魔するよー」


 身形の汚い髭面のむさ苦しいヤツを目標に凄まじい速度で戦闘不能にしてゆく。

 腕、足、鎖骨、腰、確実に1撃で壊し行動不能にする

 魔法を使うようなヤツは昏倒させる。

 アゴ壊しても良いが、無詠唱とかされたら面倒だからな。


「助太刀感謝する!」


 なんか騎士の偉そうなのが言ってるが、お前等はお前等で面倒臭いんだよな…だから無視する。


 大体20人くらい壊しただろうか、残りの盗賊が1固まりになる。

 14~5人ってトコロか…… 中々に大規模な盗賊集団らしい。


「テメェ一体何モンだ!俺様の計画をブッ潰しやがってぇぇぇぇ!」


 盗賊の固まりの中で頭1つ抜けてデカいのが喚いてる。

 あれが頭か? 下品な顔してやがる……


「喋るな。 息臭ぇんだよ 喚いてないでさっさと来い」


「ぶっ殺せえええええええええええええええええええ!」


 盗賊共が集団で襲い掛かって来る。

 

 俺は棒を旋回し足を払い、高速で突きを出し武器を壊し、迫る魔法の火の玉は片手で払う、そして確実に無力化してゆく。

 そして介入してから僅か数分で、盗賊の配下は全て倒れ呻き声を上げていた。

 残るは頭の大男1人。


「な、ななな……」


 ワナワナと震え、状況が理解できないのか、混乱して言葉にならないのか。


「喋るなと言ったはずだ。 ホレ、あとオマエだけだ。 来いよ」 


「テッメェェェェェェェェ!」


 大きな体で巨大な斧を振り上げ、渾身の力で俺に振り下ろしてきた。

 膂力、威力、太刀筋共に申し分無い。 人間としては、だが。


 迫りくる大斧。 盗賊頭の顔が「殺った」と確信しニヤっとしてる。

 だが残念。俺が突き出した棒の先端、僅か4cmの部分で受け止められ、その大斧はピタっと動きを止める。

 まぁ普通の木の棒に見えるが、実は芯棒にオリハルコン、その芯棒にミスリルコーティングしてダマスカス鋼で全体を包み込んだ神級の逸品である。 ちなみに自作。


 それを知らぬ、只の木の棒に止められたと思っている盗賊頭は目を見開かんばかりに驚く。 そして周りも。


「ぐぬぬぬぬぬ……」


 盗賊頭が幾ら力を大斧に込めようが、棒の先端、しかも片手だけで抑えられた状況は変わらない。


「もういいか? 頭悪そうなお前さんでも、力の差も理解できたろう?」


 そう言って俺的に軽く大斧を押し返す。

 そして棒による旋回2回。

 分厚い鉄製の大斧の刃の部分を粉砕し、盗賊頭の足も壊した。

 足を変な方向に曲げながらのた打ち回る盗賊頭。 その背を踏みつけ動きを止める。

 踏みつけながらちゃんと棒で叩いて両腕の動きも封じておく。 ポキポキって感じ。


 その時、一陣の風が吹いて外套のフードが剥がされた。

 夕日の元に晒され、現れた顔は、茶髪に笑ってるような糸目、可もなく不可も無くな何処にでも居そうなフツメン。 ほっとけ!

 身長は160cmに届かないくらいの見た目は子供!年齢は50億才以上!その名もハチマン!


「た、助けてくれ! 金、金ならやる! 女もなんでも! だ、だから!」


「いらん。 そもそも俺はお前の仲間も、誰も殺してはいないぞ」


 そう。誰も殺してはいない。


「まぁこれから先、長生き出来るかどうかは知らん。 長生き出来たとしても五体満足かは保障できんが」


 どこかしら壊してるからな。 多分今までのような生き方は無理だろう。


「大体お前らはそうやって命乞いしてきたヤツも殺してきたのだろう? 自分がその立場になったら命乞いって恥ずかしくないか?」


 そう言って盗賊頭の横に棒を突き刺す。

 「ひいぃぃ……」と情けない声を上げて気を失う盗賊頭。


 1度周囲を警戒し、何もない事を確認して緊張感を解く。

 外套に付いた土などを掃っていると、


「助太刀感謝する」


 騎士の偉い感じの人が近づいて来て、頭を下げてくる。


「いや、偶々急ぎの用があって通ったらこの状況だったから手伝っただけだ。 お互い様って事で気にしないでくれ」


「我が主が直々に礼を申したいとの事。是非此方へ」


 うわぁ…… 絶対面倒になりそうな感じがする……


「申し訳ないが、先ほども言ったが急ぐ旅なのだ。 気にしないでもらえると助かるのだが……」


「それは我が主の伯爵様の言よりも優先すべき事なのか!?」


 偉い騎士の隣に居た若い騎士が威圧気味に聞いてくる。

 周りの騎士も殺気立ってきている。


「俺の中ではそういう事です。 もういいですか?」

 

「キサマァァァァァ!」


 激高した勢いに抜刀する若い騎士達。

 出たよ…… だから貴族とか面倒臭いんだよ…… 思い通りにならないと癇癪起こしやがる……


「止めよ! お前ら盗賊にやられそうになってた我等8人が、たった1人で全ての盗賊を倒したこの者に勝てると思ってか!」


「し、しかし!」


 偉い騎士の一喝に怯む騎士達。 だが抜刀したままだ。


「なぁ… 未だに抜刀してるって事はそういう意味って事でいいのか?」


 俺は問いかける。 刃物を向けられて良い気はしないからな。

 騎士達も剣を握る手に力が入る。 その時、


「双方、お止めなさい!」


 馬車から出てきた鮮やかなグリーンのドレスを纏った金髪の少女。 15~6といった所か……

 その少女はメイドに手を引かれ、偉い騎士の隣まで歩いて来る。


「私、バノール伯爵家長女パフューネと申します」


 そして俺に向かって深々と頭を下げた。


「今回、危ない所をお助けいただき、有り難う御座いました」


「そして」


「恩人に対しての騎士達の無礼、誠に申し訳なく思います」


「な!お嬢様……!」


 平民に頭を下げるお嬢様に驚き、そして自分達の行動が守るべきお嬢様に頭を下げさせてると知った若い騎士達。

 驚きと、茫然と、戸惑いと、若い騎士達はあまりの展開にポロっと構えてた剣を落としてしまう。


「馬鹿者!剣を拾え!そして鞘に納めよ!今この時襲われたら誰がお嬢様をお守りするんだ!」


 偉い騎士の一喝に再起動する騎士達。

 剣を鞘に納め、上げた顔には口惜しさと後悔の念が滲み出ていた。

 んーまあ自業自得だな。


「お顔をお上げくださいお嬢様。 感謝と謝罪、確かに受けました」


 俺の声を聞いて顔を上げるお嬢様。


「あの… お名前をお聞かせ下さいますか?」


「あ、失礼しました。俺の名はハチ。 しがない行商人で御座います」


 頭を下げる俺。 言われるまで名乗り忘れるなんて俺も礼を欠いてたな…… 反省。


「な……あの強さで商人だと……」


「冒険者では無いのか……」


 外野が五月蠅い。 いいじゃん強い商人が居たって……


「ハチ様ですね。 また日を改めてお礼をさせて頂きたく思います」


「ではその時は、是非ご一緒に甘いお菓子でも」


「うふふふ。 では甘い美味しいお菓子で歓迎させて頂きましょう」


 笑顔で返してくれる。 どうやら印象操作はバッチリなようだ。


「あ、お急ぎでしたわね? 長々と引き留めて申し訳ありません」


「いえいえ、ではこの辺で失礼させて頂きます。 騎士長殿。 後はお任せしてよろしいか?」


「私の事はピエールと。 後はこちらで処理しておきますので」


「助かりますピエール殿。 それではお嬢様。 これにて失礼いたします」


 頭を下げてから背を向け、速攻走り出す。

 結局面倒な事になったよ…… トホホってやつだな…… あ思い出した。


「ピエール殿!盗賊の賞金は、俺要らないんで、騎士達の訓練資金に充ててくだされー!!」

これからよろしくお願いします。



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