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少し待ってみたが、やはり彼は下を向いたままで動かなかった。
思わず声をかけようとした時、彼が顔を上げた。
「うーーん、今回は駄目かもね」
そう言うと彼は立ち上がり「失礼します」と言ってすたすたと小屋を出て行ってしまった。
俺は慌てて後を追った。
去り際にいとこを見たが、その顔からはなんの感情も読み取ることが出来なかった。
「おい、どうした?」
前を行く占い師に声をかけたが、何も返ってはこなかった。
二人で車に乗り込み、車が動き出すとようやく彼が口を開いた。
「いましたよ」
「えっ?」
「男の子ですよ」
「どこに?」
彼は少し間を置いた後、答えた。
「父親と母親と姉の、お腹の中です」
「……お腹の中ぁ?」
「ええ、もうとっくに消化されていますけどね。その前にはいましたね、三人のお腹の中に。間違いなく」
「……」
彼は顎をぼりぼりとかくと言った。
「よっぽど腹がへっていたんでしょうね」
と。
終




