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俺の会社に来たことなど一度もないはずなのに、「どこそこにある何番目のロッカーの裏に落ちている」と言った彼の言葉は本当だった。


いとこに占い師のことを伝えると、いとこはあっさりと承諾した。


とは言ってもいとこは、霊能力だの超能力だのといった類のものを、まったく信じていないたちなのだが。



透視はいとこの家でやることになった。


離れていても出来ないわけではないが、探している対象が人間の場合は、その人が住んでいたところでやるのが一番効果的なのだと、占い師は言う。


「ほんとにこんな所に人が住んでいるんですか?」


小屋を見て、占い師が小さな声で言った。


「住んでますよ」


俺も小さく答えた。


小屋に入ると一家三人が座って待っていた。


俺たち二人が入ると、小屋はほぼいっぱいになった。


いとこたちは占い師を見つめ、占い師は狭い家の中をなんの遠慮もなくきょろきょろと見ていたが、やがていとこに目を向けて言った。


「それでは始めましょうか」


占い師は仮面のように無表情になると、何事かを小さく呟き始めた。


俺はこれまでに二度ほど見たことがあるが、彼はいつもこうやって透視をするのだ。


そしてその呟きが、不意に止まった。


前回と前々回は、呟きが止まった後に「何々はどこそこにあります」と告げた。


俺は今回もそうだと思っていたが、彼は何も言わなかった。


いつもよりも少しだけ見開いた目でいとことその妻、そして十歳の女の子を見ると、下を向いてしまった。


しばらく様子を伺っていたが、そのままだ、


――いったいどうしたんだ?

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