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デュアル・センシズ ~異世界を一つの体で二人旅~  作者: 凜乃 初
六章 考古学者の少女とグロリダリアの魂
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6-18 俺が調べて、僕が斬る!

 イーゲルと戦い始めてからすでに十分。僕は突破口を見つけられずにいた。

 懐へは飛び込める。けど、こちらの剣は急所に届かず、鎧に弾かれ、致命傷以外の攻撃だとキツいカウンターが飛んでくる。

 相手の攻撃はすべて即死クラスのものばかりで、一瞬たりとも気が抜けない。

 ryuの時にも思ったけど、痛みがない相手というのは厄介だ。致命傷以外は気にすることなくこちらへの攻撃タイミングに変えてくる。普通の人であれば、多少の傷であっても痛みが動きに関係するため多少の対処は必要になるはずなのだが、機械の体にはそれもない。

 彼を倒すには致命傷を与えるか、動力源を潰すしかない。


(レイギス、魔法を吸収している装置って内蔵式だと思う?)

(判断に悩むところだな。パッと見た感じ部屋の中に怪しいものはない。さっき床を破壊した時にも特に変な物や動きは無かったからな。とすると内蔵式って考えちまっていいと思うぞ)

(なら僕はあいつの装甲を剥がすことに注力するから、レイギスはその変換器を見つけて)

(いいぜ、お前の視界、きっちり確認しておいてやる)


 打ち合わせを済ませ、再び鎧へと斬りかかる。

 相手はこちらの攻撃など気にする様子もなく掲げた剣を振り下ろしてきた。

 僕はそれを躱して鎧の左横へと回る。相手の利き手を見て躱す方は追撃の難しい側へ。

 鎧も剣での追撃は無理と判断したのか、空いている左手で裏拳を狙ってきた。

 それを一歩下がってギリギリで躱し、空いた脇腹鎧の隙間目掛けて剣を差し込む。

 感触はひどく硬いものだ。中までしっかりと防御が施されているのか、切先がコードやチューブを斬ったような感触はない。

 このまま鎧が身じろぎすれば、剣が折れてしまう。即座に剣を引き抜き相手の背中へ回る様に逃げる。

 鎧も当然こちらを追って振り返るが、さらに振り返りざまの首を狙って剣を振るう。

 流石に相手も腕の鎧で受け止めてきた。


(首は弱点で確定。脇腹から刺しても中にも鉄板がありそうだね)

(多重装甲化してるんだろ。見た目だけの鎧じゃねぇな。次は関節狙ってみろ)

(うん)


 再び相手の剣が振り下ろされる。すれすれで躱して追撃をしたいところだけど、僕はバク転であえて距離を取る。

 地面へと叩きつけられた鎧の剣が床板を粉砕し、鋭い破片が周囲へと飛び散った。

 これがあるから迂闊に躱せない。手りゅう弾のように床の破片が全て凶器となるのだ。相手は機械の体で気にしないかもしれないが、僕はこれが刺さると地味にパフォーマンスを削られる。

 しっかりと躱してパフォーマンスを維持しなければ、この戦いは生き残れない。


「まだ粘るか」

「ええ。この魔導具を止めるまでは粘りますよ」

「意味のない行為だ。確かにお前は強いかもしれないが、私を倒すことはできない。そして倒すことができない以上この魔道具は止まらない。いいことを教えてやろう。エネルギーキャノンの発射まで、あとクウィエカクトだ」

(五分だ。時間がねぇぞ)

(ならレイギスも頑張って!)


 後五分。その間にあれと魔導具を止めないといけないのか。

 時間がない。けど焦っちゃダメだ。焦りは隙を生む。あの相手にそれは命取りになる。


「来ないのか? 時間だけが過ぎていくぞ?」

「くそっ」


 安い挑発だが乗るしかない。

 僕は駆けだし距離を詰める。だが正面から行っても無意味だ。そのまま横を走り抜け、キューブを目指す。


「先にコントロールを狙う気か!」


 鎧が反転し僕を追ってくる。これではコントロールキューブに触れても操作をしている時間は無いだろう。けど僕の狙いは鎧を動かすことだ。

 ブレーキを掛け反転し、駆けてくる鎧へと一気に距離を詰める。

 ドンと構えた状態の敵から隙を見つけるのは至難の業だ。だが、相手が少しでも慌てて動いているこの状態なら!


「そこ!」


 間合いを外した鎧の関節に剣を突き立てる。鎧の隙間を突いた時とは違う確かな感触。何かを破壊し深く刺さる感覚だ。


「くっ、おのれ!」

「やっぱり戦い自体は素人。やりようはあるね」


 素早く剣を抜きつつ、さらに装甲へと一当て。ガンッと音が響くだけで、傷は付くことはない。けどそれでいい。僕は死角へと回りながら何度か鎧を叩く。そのたびに室内に重い音が響き渡る。


「無駄なことを!」


 鎧が強引に剣を振るい、僕を引き離す。


(レイギス、どう?)

(一分待て)

(三十秒で)


 イーゲルはこちらの挑発に苛立っているのか、先ほどまでの余裕と受け身の様子はなく、むしろ向こうからこちらに斬りかかってきた。

 一撃が重い攻撃を躱し、さらに関節を狙う。それは防がれてしまったが、三十秒を稼ぐことは出来た。


(月兎、首から右の肺を抜く感じで突き立てれば行けるはずだ)

(分かった)


 レイギスに調べさせていたのは、コンバーターの位置だ。鎧を色々な角度から叩き、その音の反響を計算してあの鎧の基礎設計から不要なパーツがある場所を割り出させたのである。

 勝利条件は揃った。後は僕がレイギスの提示する攻撃方法を実行できるかどうかの問題だ。

 大きく息を吸い吐き出す。


「これで決めてやる」

「させるか!」


 駆け出し交差する。

 一撃目はけん制、振り返り二撃目はガード、相手の三撃目を躱しながらこちらはバランスを崩させるために足の関節を狙う三撃目。

 相手は関節の破壊を嫌って強引に足をずらしバランスを崩す。

 ここ!

 相手の脇への入り込み鎧の隙間へと手を差し込む。そのまま鉄棒の逆上がりの要領で床を蹴り上げ鎧の肩へと乗り上がった。


「貴様!」

「これで!」


 剣の柄を両手で握り首元へと切先を据える。


「終わりだ!」


 力一杯剣を突き入れた。その軌道はレイギスの注文通り首元から肺を貫くコースだ。

 バリバリと何かが壊れる音と共に切先が深く差し込まれ、腰のあたりまで沈んだ時点でカツンと何かにぶつかって止まった。

 鎧はビクビクと体を震わせつつ火花を上げている。


(月兎、すぐに離れろ。コンバーター内の魔力が暴走するぞ)


 慌てて鎧から剣を引き抜き、鎧が破壊した床の中へと身を隠した。

 直後、爆発と共に炎が室内を埋め尽くし、煙が床の下まで入り込んできた。煙を吸わないように口元に袖を当て、できるだけ呼吸を我慢する。

 一分ほどで煙が外へと流れ、静けさが戻ってきた。


(月兎、大丈夫か?)

(僕は大丈夫。それよりもコントロールキューブは無事かな?)


 床から這い出しコントロールキューブのあった台座を確認する。台座自体は黒こげになってしまっているが、コントロールキューブ自体は青く輝いていた。


(キューブは魔力で覆われているからな。この程度の衝撃なら本体が壊れることはねぇさ)

「凄いね」

(んじゃササッとやっちまうぞ)


 僕はコントロールキューブの元へと歩み寄りそれに手を当てた。

 現れたスクリーンからログインし、システムをハッキングする。管理者権限へと割り込み、ポナムデイのコントロールを掌握。発射準備を開始していたエネルギーキャノンの稼働を停止させた。

 同時に操縦をマニュアルへと変更し、町の上から移動させていく。

 ゆっくりと移動するポナムデイをモニターで確認しつつ、僕はホッと息を吐いた。


「間に合った」


 その場へとぐったり座り込み、剣を投げ出す。

 もうクタクタだ。一歩も動きたくない。


(お疲れさん。後はこいつを地面に叩きつけるだけだな)

(叩きつけるって――普通に降ろすだけで大丈夫でしょ)

(エネルギーキャノンは破壊しておきたい。解析されれば隣国の脅威になるぞ)

(それもそうか)


 無事なままだと年月が経てばいずれこの魔導具の解析も可能になるかもしれないもんね。その時にエネルギーキャノンの技術が流出すれば、その時の王様がそれを他国に向けるかもしれない。

 レイギスたちが本来残すつもりのなかった技術なのだから、それはレイギスたちの意思に従おう。

 再びコントロールキューブへと手を伸ばした時、そのスクリーンにアラートの文字が現れた。同時に、室内に警報が鳴り響く。


「これは!?」

(月兎、文字見ろ!)

「チャージエネルギーの流体暴走!?」

(エネルギーキャノンのチャージ済みエネルギーが暴走してるんだ。お互いの力に干渉して勝手に加速してる!)

「どうすればいいの!?」

(チャージしてあるタンクを破壊する。ここから下まで行く時間はねぇし、さっさと地面に叩きつけるぞ。そうすりゃ漏れ出したエネルギーは一気に空気中に拡散する)

「分かった!」


 スクリーンを操作してポナムデイの軌道を地面へと向ける。


「出来た」

(なら逃げるぞ!)


 僕たちが部屋から逃げ出そうとすると、室内の壁から破裂音が聞こえてくる。タンクから逆流したエネルギーが副回路を通じて上部へと流れ込んできているらしい。

 壁を破壊し天井を破壊し、瓦礫を降り注がせながら爆発はさらに激しくなる。

 降り注ぐ小石を躱しつつ出口へと急ぐ。そんな中、不意に僕の足元が消えた。それはイーゲルが剣で砕いた場所だった。


「うわっ」

(月兎!)


 直後頭を揺さぶられる様な衝撃に、僕の意識は暗転するのだった。

 

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