表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/80

57.どっちが主か分からんのう…

 ショーマは、ジルディウムと交戦した次の日には、帝都を出発した。

 リーネも、一緒に行くと宣言した後、すぐに身支度を済ませていた。


 3人と1ふよと荷物(食料やガルや各人の衣類など)を載せるには、馬車が少し手狭だったので、元の馬車を下取りに出して、一回り大きな馬車を購入した。

 馬車を引くニックは、増えた質量でも、しっかり引っ張ってくれるので、とても助かっている。

 褒めてやると、尻尾を嬉しそうにブンブンと振っていた。


 ショーマは、ふれあい動物園にいたイグアナを触って、ちょっとテンションが上がった時のことを思い出す。

 可愛いとか、気持ちいいとかとはちょっと違うけど、何となくワクワクする感じだった。

 爬虫類もいいかもなぁ、と思うようになったショーマは、自身の環境適応力に少し感心した。


 馬車に揺られている中で、リーネは、そう言えば、と話を切り出した。


「空中要塞と戦っていたのって、ショーマさんですよね。」

「あ、バレました?」

「流石に分かりますよー。」


 リーネはそう言いながら笑う。

 リーネには、マッチョメンを召喚できるようになってしまったことも話していたし、まぁ推理する程の事でもない。


「ショーマさんって、やっぱり凄い人ですね。えっちなスキルを使うだけじゃなかったんですね。」

「誤解です。」


 それは大きな誤解です、リーネさん。

 冗談ですよ、とまた笑うリーネを見て、ヴァネッサに影響を受けてるんじゃなかろうか、とショーマは危惧した。

 二人揃ったら怖いなぁ、なんてことを思ったりもした。


 リーネには素直なままでいて欲しいものだ。


────


 ショーマたちは、サルディア王都に向かう途中に立ち寄った街で、宿泊ついでに、すぐに終わりそうな依頼を受けにギルドへ行った。


 ギルドの受付に行くのは久しぶりだ。具体的には、竜人の村に入ってからは1度も来ていない。


 竜人の村では、衣食住には困らなかったので、ギルドに用事がなかった。

 だが、外に出れば流石に資金稼ぎは必要だ。

 グランドイーターの件で手に入れた貯金もあるが、何があるかわからないので、路銀くらいは稼げる時に稼いでおくに、越したことはない。


 中級程度の魔物狩りは、大体依頼が出ているので、基本はそれを。上級魔物の依頼があれば優先的に受ける。


 ついでに、久しぶりにギルド受付でカードの更新をしたら、ショーマのレベルは72まで上がっていた。受付のお姉さんが驚いていたが、ショーマは愛想笑いでそれを流した。


 レベル50が1つの壁になる。それ以上を目指すには、何か特別なものを得るか、逆に失う必要があると言われている…らしい。


 ショーマは、比喩ではなく命を失いまくっていたので、その壁を超えられたのだろう。


 そして、72というレベル。

 これだけレベルが上がっているならば、



 『また、新しい仲間を召喚出来るかもしれない。』


 次の瞬間には、ショーマは召喚施設に走り出していた。


────


 気づけばショーマは、召喚施設にいた。


 どうやら、無意識のうちに、召喚陣までやって来てしまったようだ。ガルには、「平常運転であるな。」と揶揄されるが、気にしないでおこう。


 ヴァネッサのいるカデリナまでの道中、何があるかもわからないので、戦力は増やしておいた方がいいのは確かだ。

 不純な動機だけではない、とショーマは自分に言い訳をする。


「ショーマさん、急に走り出すからビックリしましたよ…。」

「あ、ごめんなさいリーネさん。」


 リーネが、遅れて追いついてきた。


「それよりも、急に動き出したショーマさんに、ぴったりマークについてるルシルさんに驚きですけど…。」

「姉弟子ですから。」


 この人を振り切る事は、ほぼ無理だ。もう慣れっこだな、なんて思う自分が少し怖いとショーマは感じる。

 どんなに優秀なフォワードでも、このセンターバックからは抜け出せないだろうし、もはや諦めの境地に至っていると言ってもいい。


「それで、懲りもせずモフモフ狙いであるか?」

「勿の論。」


 今までは、モフモフへの執念を全身全霊で、召喚にぶつけ、失敗している。


 だから、今回ショーマが取り組むのは、"無心"。


 雑念を払い、無欲の精神でこそ、真に求めるものを得られるのではないか。ショーマは、これまでのことを振り返り、そういう結論に至った。


 ショーマは、無の心を作る為に、澄み切った雪原をイメージした。何も無い、ただ、青空と白雪の世界。

 そこには余計なものなど一切ない。


 ショーマは、その澄み切った心で、叫ぶ。


「いらっしゃいませこんにちは!!」


 召喚陣が、白く光る。


 ショーマたちは、その幻想的な光を、目を細めて観察していた。


 やがて、その光が、中央に収束する。


 そこに見えた姿は、



 美しい毛並みを携えた、真っ白な獣。

 地球の生物で言うと、ユキヒョウのようであった。



 なんと尊い。


 ショーマは、感涙に咽び、まるで神を崇めるかのごとく、召喚された者に、跪くのであった。


 そんなショーマに、ガルからツッコミが入る。


「どっちが主か分からんのう…。」

 いつもご閲覧いただきありがとうございます。


 まさかのモフモフ召喚成功か(棒読み)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ