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44.ショーマが死にました。

「さて、久しぶりであるな、ドグ」

「その声は間違いなさそうだな、ガル」


 ショーマたちは、ガル一族の村に入り、族長の元に通された。

 初手の襲撃の後、ガルの魔力を感じ取った竜人達は、攻撃をすぐに止めてくれた。

 そしてガルは、久方ぶりに再会した知り合い、千年単位で会っていない知り合いと、挨拶を交わした。


 二人の間に流れる空気は、久しぶりとは思えないほど穏やかなものであった。

 片や老齢の竜人の姿となり、もう一方は剣の姿になってしまっている。それでも、互いの友情は変わりないと言わんばかりだった。


「あの⋯大変、申し訳ないのですが⋯⋯」


 そんな二人の間に水をさす。いや、ささせて欲しい。

なぜなら、


「と……取り敢えず……お腹の穴どうにか……してもらえませんか……?」


 ショーマのお腹は刺されたままなのだ。

 最早ショーマ自身では動く気力も無いので、族長の家まではガルの操作で来た。

 エフユーが器用に変形して大きな血管は何とか繋いでくれて、出血も出来るだけ抑えてくれているので、ギリギリ、ショーマは生きている。生きている、よね?

 ショーマは自分でも分からないくらいに、死にかけていた。


「おお、そうであったな。ドグよ、ショーマが死ぬからなんとかしてくれんかの」

「ふむ、中々難しい事をサラッと頼むな、お前は」


 まぁ、出来なくも無い。 と、族長はちょっと曖昧に答えた。


「しかしガルよ、我ら一族の掟を忘れたのか。そもそも一族以外の者は、精霊の許しが無い限り、この村に入る事を許されないのだぞ」

「ん?そんな掟あったかの?」


 それでショーマはいきなり襲われたのか。大事そうな掟だが、ガルはまるっきり覚えが無いようだ。

 ショーマサイドが不思議そうにしていると、横にいた竜人が族長に耳打ちする。


「族長、その掟は200年程前に族長が、それっぽいと言って作ったので、ガル様はご存知ないかと」


 族長は、む、そうか、と頷くと、一つ咳払いをして場の空気をリセットしにきた。

 いやいや、それっぽいとかで作った掟で殺そうとしないでもらえますか。


「さて、彼には精霊の許しを得る儀式を受けてもらう」


 族長、そのまま勢いで押し切る気だ。

 いや、もう、助けてくれるなら何でもいいです。もう、眠くなってきた……。


「ガル、ショーマの心肺が停止状態です。」

「む、早くした方が良さそうだの。」


 いや、遅ぇよ。 と、ショーマの意識があれば、ツっこんだことだろう。


「ドグ、早くその儀式とやらを受けさせい。蘇生もである。」

「良かろう。では、彼を精霊の泉へ」


 精霊の許しを得ることが出来れば、泉を出る頃には傷も癒えているだろう、と族長は言う。

 この村に治癒の泉がある事は、ガルも覚えていた。精霊のうんぬんかんぬんは知らないが。

 ガルは、意識を失ったショーマの体を動かし、泉に急いだ。



「ガル、召喚契約が失効しています。ショーマが死にました。」

「慌てるな、エフユー。泉に入ればすぐである!」


 ガクガクと頭を揺らしながら走るショーマの体は、ゾンビさながらの様子であったという。

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