40.屈強な男達にガシッと
今回はすこし短いですが
ショーマは町長に案内されながら(監視されながらと言えなくもない)、町の中を見てまわる。
町の人々は、笑顔でショーマたちに接してくれる。
しかし、"違和感"がある。
全員が全員、ふとした瞬間にショーマの背、つまりはガルを見る。
チラ見程度の時間だが、その目はまるで親の敵でも見るかのよう。
その視線に気づく度に、ショーマは恐ろしさで声が出そうになる。
「どうかされましたか?」
「い、いえ、何も…」
ショーマが少しゾクッとした素振りを見せると、町長が目ざとくそれを見ている。
まるでショーマのことを終始観察しているかのようだ。
それにより、ショーマはさらに言い知れぬ恐怖に襲われるのであった。
町長に連れられてショーマが町を観察していると、1つ気づくことがあった。
ショーマと同じように、外から来たであろう人が、町の人に連れられて歩いている様子が幾つか散見された。
そして、連れられている人は、揃ってガルと同じくらいの大きさの剣を携えていた。
その人達の持つ剣にも、町人たちの熱い視線が注がれている。
傍から見ていると、町人のチラ見スキルと表情の切り替えスキルの異常な高さに、もはや感心してしまう。
笑顔だった顔が、剣士が下を向いた瞬間に、目が飛び出るのではというくらい剣士の携える剣を見つめている。
剣士が顔をあげた瞬間に顔は元に戻っている。
ショーマのように、注意深く、被害妄想に近いくらいに、周囲を観察していなければ気づくことはないだろう。
実際、ショーマ以外に気づいている様子の人はいない。
「ショーマさん、どうか、されましたか?」
町長の、笑顔が、怖い。
「いえ、なんというか…」
ショーマは、言うべきか言わざるべきか迷った。
迷った結果、つい、口をついてしまった。
「剣、見られているような──」
ショーマが言い終わるか言い終わらないかというタイミングだった。
ショーマは、両脇を屈強な男達に抱えられていた。
「ショーマさん、ちょっとよろしいですかな?」
町長の目が、この日1番に光っていた。
母さん、異世界にアイアンメイデンとかが無いことを祈ります。
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