39.ぎくぅぅぅぅっ!!
ショーマはガルディアへの道中を徒歩で移動していた。
帝都からガルディアまでは1日、2日移動していればたどり着ける程度の距離だ。
「そういえばショーマよ」
ショーマの傍らから、ガルが話しかける。
「あの魔力爆発娘から何かスキルは得られたのか?」
「なんだよ魔力爆発娘って」
リーネからは、風魔法のスキルを得ることが出来た。
風魔法は、その名の通り風を操るスキルだ。
爽やかな風を作り出すだけでなく、威力が上がれば竜巻を発生させたりもできるようだ。
ショーマはまだ大きな扇風機位の風量だ。夏場は重宝しそうだ。
空を飛んだりできないかと思ったが、風を受ける面積が小さすぎて、コントロールできそうにない。
実際、飛行というレベルとなるとかなり困難そうだ。
グライダーみたいなものがあれば滑空は出来そうなんだが…。
後はドライヤー代わりに使えそうだ。
モフモフをふわっと仕上げられそうだ。
────
「ここか…!」
新しいスキルを試しつつ、街道を進むこと2日。
ショーマは、ついに目的地ガルディアにたどり着いた。
いかにも郊外の田舎町と言った雰囲気だが、何やら騒がしい雰囲気だ。
祭りか何か、やっているのだろうか。
町の入口にいた衛兵らしき人に、ギルドカードを提示して、通行許可を得た時に、ちょっと話を聞いてみた。
「ずいぶん町が賑やかみたいですが、なにかあったんですか?」
「おお、お兄さん知らないのかい?今、この町では"呪われた封印の剣"が無くなって大騒ぎなんだよ」
ぎくぅぅぅっ!!
ショーマは、平静を装って、へぇーそーなんですかー、と相槌を打ったが、内心の焦り具合といったらなかった。
「詳しくは町の中で聞いて回った方がわかると思うぜ」
「はぁ、ありがとうございます」
ショーマは、衛兵のお兄さんに礼をして、恐る恐る町の中に入った。
きっと、「封印を破りし罪人に死を!」のスローガンの元、槍や松明や横断幕を持った人々が練り歩いているのだ。
町の中を見る前のショーマは、恐怖で震え上がっていた。
しかし、どうだろう。
町の中の雰囲気は殺伐としたものではなく、むしろ喜びの雰囲気に満ち溢れていた。
罪人を血祭りにあげる死の儀式というよりは、普通にお祝いの祭りといった雰囲気だ。
ショーマが不安そうに辺りを見回していると、声がかかった。
「見かけないお顔ですが、旅の方ですかな?」
50代位の男性だった。姿勢正しく、若々しい立ち姿なのでそう見えるが、実際はもう少し年齢がいっているのかもしれない。
「ええ、今しがたこの町に着いたところですが、これは何のお祭りなんですか?」
「ええ、実はこの町にとって有史の中でも非常に大きな出来事がありましてね。あぁ、申し遅れましたが、私はこの町で町長をやっている者です」
ショーマも名を名乗り、遅れた挨拶を交わし合う。
"有史以来の大きな出来事"と聞いて、ショーマはガルをぎゅっと握った。
実はショーマ、ガルディアの町に入る前にちょっとした小細工をしておいた。
ガルの周りにエフユーの一部をくっつけて、別の剣に見えるようにしておいたのだ。これならパッと見で見つかることはない…はずだ。
しかし、さっきから町長の視線がチラチラと、ガルに行っているような気がする。
いや、気のせいだと思いたい。町長の言う出来事というのがガルのことと決まった訳では無いし。
「ちなみに、その出来事というのは…」
「ええ、この町に代々伝わる剣が無くなりまして」
ぎくぅぅぅっ!!
「どうされましたか?」
「い、いえ」
なんか、町長の目が光った気がする。
いや、気にしすぎだ。剣の見た目も変えているし、ショーマにやましい気持ちがあるからそう見えるだけに違いない。
「その無くなった剣というのはどういった物だったんですか?」
「ええ、ちょうどショーマさんがお持ちの剣くらいのサイズで…」
ぎくぅぅぅっ!!
「完全に錆び付いていまして…」
ぎくぅぅぅっ!!
「神話より、悪の竜剣士が封じられているという代物でして」
ぎくぎくぅぅぅっ!!
ようやく到着したガルディアだったが、ショーマは早速旅立ちたい気持ちになっていた。
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