37.ショーマ様のエッチ
「おはようございます、ショーマ様。」
笑顔で挨拶をしたショーマに、笑顔で挨拶を返してくれるヴァネッサ。
目は笑っていないが。
「お早いんですね、ヴァネッサさん。」
「ええ、ショーマ様が今日の朝に出発されるということでしたので、お見送りにと思い、出てきたのですが」
ヴァネッサはそこで言葉を切って、リーネの方に目線を落とした。
ショーマは努めて「やましいことは何もしていない」顔を作ろうと努力したが、恐らくうまくできてないと思う。
ヴァネッサは、ふぅ、と一息つくと、
「話をする前に結界魔法を使う方が先のようですね」
そう言って、ヴァネッサは3人の周りを認識阻害の結界魔法で包んだ。防御力はないが、いわゆる人払いの結界だ。
結界を張り終わると、ヴァネッサはショーマに向き直って、笑顔を作り直した。
「さて、ご説明いただけますか?」
例のごとく、その目は笑っていなかった。
「なるほど、そういうことですか」
ショーマが事情を説明し終えると、ヴァネッサはそう一言だけ言った。
それからショーマと、ショーマの横で気絶しているリーネとを見比べた。
そして一言付け加えた。
「ショーマ様のエッチ」
「なっ!」
誤解です!とショーマは必死に否定する。
「魔力循環をやましい気持ちでは使いません!」
「…私の時も、そうでしたか?」
ヴァネッサの切り返しに、ショーマは言葉を詰まらせる。
「初めはその、モフモフのことに集中し過ぎてそれどころではありませんでしたけど…」
「けど?」
「何度かやっているうちに、その……少し……」
「ショーマ様のエッチ」
くっ、言い返せない。
まずいなぁ、と思ってショーマはヴァネッサの表情を伺うと、ヴァネッサの目が、今度は笑っていた。
「ヴァネッサさん、からかわないでくださいって言ったじゃないですか」
ショーマがそう抗議すると、今度は本当にヴァネッサは、ふふっと笑って、
「だって、慌てているショーマ様が面白くて」
こっちは気が気ではなかったというのに、全くいたずら好きで困った人だ。
「あれだけ私に色々するチャンスがあったのに、結局尻尾と耳以外触らなかったショーマ様が、こんな所で変なことをする勇気があるとは思いませんよ」
ヘタレですからね、とヴァネッサに同調するエフユーにショーマはチョップで、ささやかに抵抗しておく。
しかし、紛れもない事実なので何も言い返せない。
そんな風にヴァネッサとやり取りをしていると、リーネがいつの間にか目を覚ました。
「あれ…。私、どうなったんですか?」
「魔力循環の反動で、少し眠ってしまったみたいです。そんなに長い時間ではありませんでしたよ」
ショーマは、リーネが体を起こすのを手伝いながら、状況を説明する。
リーネは、何となく状況を把握したようだったが、ショーマの横にいたヴァネッサを見て驚いたようだった。
「あの、こちらの綺麗な女性は?」
「ヴァネッサ=オルランドと申します。初めまして、リーネさん」
「は、初めまして!」
ヴァネッサの柔らかな物腰と優雅な雰囲気に、リーネは少し緊張しているようだ。
リーネは、ショーマとヴァネッサをしばし見比べたあと、
「えっと、ショーマさんのお知り合い……ですよね?」
「はい、ショーマ様は私の大事な人です」
「ヴァネッサさん、ヴァネッサさん、語弊がありますよ!」
それからヴァネッサは。命の恩人なんです、と楽しそうに付け加えた。
周りの人を巻き込みつつ、からかうのもやめて欲しい。
このドS極上モフ可愛い狐娘め!
ショーマは、1つ咳払いをして、一呼吸置くと、本題に話を戻した。
「それでリーネさん。体におかしな所はありませんか?痛みとか。」
「いえ、痛みとかはありません。…けど」
体が軽くなった気がする、とリーネは言う。
魔力が滞っている状態は正常ではないので、体にも何かしら悪影響を与えていたのかもしれない。
「リーネさん、ちょっと魔法を使ってみて貰えますか?」
「はい」
リーネは、さっきまでと同じように"一生懸命に"魔法を発動させようとする。
「ショーマよ!結界魔法を全力で貼るぞ!」
「え!?何??」
「早くせい!我も手伝う!狐娘もである!」
「え?は、はい!」
ショーマは半ばガルの操作で強制的に防御用の結界魔法を展開する。それに重ねてヴァネッサの結界魔法も貼られる。
次の瞬間、
爆発に近い火力の火魔法が発動して、二重結界が吹っ飛んだ。
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