3.異世界で親友ができました
「うむ、久々の外は気持ちいいな!!」
ショーマの傍らで、錆び付いた剣から声がする。
わくわくモフモフ召喚したらなんか剣出てきた。
召喚陣を管理してる爺さんもこんなのが出てきたのは初めてだという。珍しすぎてなんか記念撮影を爺さんに求められた。
因みにこの世界にもカメラは普通にあるようだ。フィルムは使わず、魔力で紙に画像を写すシステムらしい。
「おー、人がたくさんおるな!我が封印されてからどれぐらい経っておるのか?ここは最後にいた場所よりかなり南の地方のようだが、どの辺かの?ジオ・ガルディン再臨の地となる訳だな!」
自らをジオ・ガルディンと名乗るこの剣、かなり喋る。モフモフではなくサビサビの剣だったが、まあ召喚は成功した。幸いコミュニケーションも取れるようで助かる。
ショーマは新しくできた仲間に話しかけてみることにする。これが召喚士としての第一歩だ。
「えーと、ジオ・ガルディン?」
「ん?なんであるか人間!」
「俺の名前はカンジ・ショーマ。俺がお前を召喚したんだから、俺がこれからお前の主人になるわけだけどいいかなぁ?」
「主人?お前が我の?阿呆なことを言うな。なぜ我が人間に従属せにゃならん!」
どうしよう、一歩目で躓いた。こういうのは召喚した時点で主人に逆らえなくなってたりするもんじゃないのか⋯⋯。さっそく召喚士としてやっていく自信がなくなってきた。
このままだとどうにもショーマの召喚士としての一歩が進まないので、ちょっと脅してみるか、とショーマは腹を括った。
「しょうがない。叩き折るか」
「なぬ!?」
ショーマは剣を大きく振りかぶる。
「お主、何をすっ⋯⋯」ガンッ!!
剣が地面に思いきり叩きつけられる。石に当たり、鈍い音がするが剣は折れない。なかなか頑丈なようだ。錆びてはいるが、武器としての強度は問題ないようだ。
「じゃあ鍛冶屋にもっていって鋳溶かしてもらうかな。その金属を売れば多少金になるだろうし」
「お主、何をしようとしておる!我を溶かすだと!?」
「だって言うこと聞かないんじゃしょうがないだろ。もう一回召喚やり直すよ」
ショーマのような初心者召喚士が召喚できる数は1体だけ。ただし、召喚された魔物が死んでしまった場合は再度召喚を行うことができるらしい。今回の場合は召喚されたのが剣だから、溶かしてしまえば剣としては死んだようなものだ。
はっきりいって、今ショーマに言うことを聞かない魔物を抱えていられる余裕はない。どうにか召喚士として生活できる下地を作らなくてはならない状況で、非協力的なパートナーではやっていけない。
そう、ショーマにも余裕が全くないのだ。
「ということで、鍛冶屋に⋯⋯」
「ちょちょちょちょちょちょっと待て! 待つのだ! おお主、もっとこう⋯⋯あるであろう!? 説得するとか! いきなりぶっ壊す発想に至るか、普通!?」
「だって、人間の言うこと聞く気ないんだろ?」
「ぬぅぅぅぅ⋯⋯」
ガルディンが黙り込んで考え始めた。ひとしきり考えた後、ガルディンは意外な提案をしてきた。
「⋯⋯親友ならよいぞ」
「は?」
親友?
「親友だ、親友!腰を据えて語り合う親しき友、つまり親友になりたいと言っておるのだ」
親友ねぇ⋯⋯、とショーマは少し考える。
「親友の言うことは聞くのか?」
「もちろんである。親友であるからな!」
「他の人間にも迷惑かけたり、偉そうにしたりしない?」
「親友の頼みであればな!」
親友というポジション、これがガルディン最大の譲歩なのだろう。信頼関係を築いていく上で、ここで無理やり従属させるよりも、友として接する方がいいかもしれない。この世界にはショーマの友達と呼べる人はいないし、そういう存在がありがたいという気持ちも正直ある。
「わかった。よろしくな、親友!」
「うむ。我が親友、召喚士ショーマよ。我のことはガルと呼ぶが良いぞ。親しき者は我を皆そう呼ぶ」
母さん、異世界で召喚士になったら初めての親友ができました。ちょっと錆び付いて固いけど、そんなに悪い奴ではなさそうです。
こうして、ショーマは召喚士としての第一歩を見事に(?)踏み出したのであった。
―――
そのあとショーマは、モフモフが出なかったことへの八つ当たりで、自称女神(仮)さんに"対女神精神攻撃(物理)"大人verを発動した。
会話リンクしていない状態で効果があるかはわからないが、とにかく思いつく"大人なこと"をしておいた。
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