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21.母さん、異世界を救いました。

「⋯世界?」

「世界です」


エフユーの身の上話が始まるかと思ったら、ショーマが世界の救世主になっていた。

なんのこっちゃわからない。


「どういうこと?」

「順を追って説明します」


そう言ってエフユーは、体を変形させた人形劇を交えながら、話してくれた。


「まず、私が作られた世界と、この世界は別のモノの様です」

「異世界から召喚されたってこと?」


ショーマと同じだ。


ただ、ショーマとエフユーの差は、強制か合意の上か、という所にあった。


「異世界召喚の際に、召喚を受け入れるか意思確認がありました」


面白そうだったので受けました。

エフユーは、ピースを作りながらそう言った。

異世界召喚なんて怪しげなもの、面白そうとかで受けちゃうのか。


「私を作ったのは、いわゆる『マッドサイエンティスト』の類いであったと認識しています」


エフユーが異世界についての話を続ける。


―――


エフユーの世界では、科学技術の発達した世界。

ショーマの世界と同じように、魔法は存在しない。

科学技術の発達程度はショーマの世界を遥かに超える水準にあり、核融合炉なんかも実用化している様なところだそうだ。


エフユーを作ったのは、そんな世界にあっても天才と呼ばれる科学者だ。

画期的な発明を様々に作り出した。


だが、その天才は人格に大きな問題を抱えていた。

何よりも、自身の研究開発を優先させ、非人道的な行いも平気でしていた。


そのため、天才科学者は、自らの研究を没収され、島流しに遭った。


科学者は、恨んだ。


自らの研究を奪った世界を呪った。

いっそ滅ぼしてしまえと、そう考えてしまった。


科学者は、世界に復讐すべく様々な破壊兵器を作り出した。

それらは、既存の兵器を軽々と破壊し、世界を恐怖に陥れた。


世界の人々は、何とかそれらと互角に戦った。

多く犠牲を払いながら。


だが、それらの破壊兵器ですら、科学者にとっては時間稼ぎでしかなかった。


世界連合軍が、科学者の潜伏地に何とかたどり着いた時、“それ”は既に完成していた。


FU99-Dと呼ばれる最終兵器は、これまで世界を苦しめていた破壊兵器を遥かに上回る性能を持っていた。


科学者は、FU99-Dを起動させる。


「やれ、FU99-D!この世界を滅ぼせ!」


高笑いと共に、科学者は最終兵器に命令を下す。


世界の誰もが、絶望し、終わりを確信した。


―――その時だった。


「あ、呼ばれているようなのでいってきます」


最終兵器は世界を滅ぼすことなく異世界へと旅立っていった。

手の形を作り、バイバイと手を振りながら、静かにすーっと消えた。


「「⋯え?」」


こうして無防備になった科学者は捕えられ、世界は救われたのだった⋯。


―――


「めでたし、めでたし」


ショーマは、劇を終えたエフユーに拍手をする。


どうしよう、なんか知らないけど異世界を救ってしまったらしい。

なんだか、そのマッドサイエンティストさんにも申し訳ない気持ちが沸いてくる。


一世一代の大勝負、切り札を出して大見得を切ったところで、その切り札をひょいっと持ってかれちゃった訳だ。


取り敢えず、名も知らぬ異世界の天才を哀れむ事にした。

南無南無。


というか、召喚されてくる奴2人とも世界滅ぼしかけてるなど、異常だ。

みんな気軽に世界滅ぼそうとするのはやめて欲しい。

もっと平凡なやつは来ないのだろうかと、ショーマは切に願う。


ちなみに、「世界を滅ぼす」という命令は、指揮権がショーマに移ったことでリセットされたそうな。

良かった。いきなり世界征服などされても気まずい。


さらに言うと、今のエフユーには世界を滅ぼす力はないみたいだ。

能力に制限が掛けられているらしい。


召喚されたものは召喚士のレベルに準じたレベルになる、というのは魔物以外にも適用されるようだ。


「今出来るのは簡易形状変形と変色、硬度変化、密度変化、少数分離などです」


うにょうにょしながらエフユーが説明してくれる。

ショーマは少し疑問に思った事をエフユーにたずねてみる。


「エフユーの体を構成しているのは金属なの?」

「一般的に存在しない物質です。状態や性質が不確定な物質で構成されています。一般に存在しない為、金属、非金属の分類はできません」


エフユーの開発者が作り出した物質だという。

存在が不確定。他の何でもないが、他の何にでもなれる。

ショーマは、そんな物質を知っている。


『魔力』だ。


魔力は、魔法によって様々な性質に変化する。

エフユーの開発者は、科学の力で魔法の域にまで達したのかもしれない。


ん?様々な性質に変化する?


「エフユー、もしかしてモフモフになれたりもするのか?」

「モフモフ?」


ショーマがモフモフについて熱く説明すると、エフユーはやってみてくれた。


ゴクリと喉を鳴らし、ショーマは恐る恐る、エフユーに触れてみる。


ふにょん、と柔らかな感触。


柔らかくて気持ちいい。モチモチクッションみたいだ。


だが、これはモフモフではない。


「違いましたか」

「うん、そうだね。そう都合良くは無いよね」


ショーマは天を仰いで一筋の涙を零した。


母さん、異世界で新しい仲間ができました。

枕にとても良さそうな、気の良い奴です。


あとついでに異世界を救いました。

モフモフの筈がモチモチが来た。

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