20.うにょうにょ
「ありがとうございましたー」
ショーマは、管理のおじさんにお礼を言って神殿を出た。
その後ろを、うぞうぞと、金属のようなスライムのようなモノがついてくる。
なんだコレ。
スライムの仲間かと思ったが、ガルが言うには生き物ではないらしい。
ちなみに、今回も神殿のおじさんに記念撮影を求められた。
スライム系モンスターが召喚されるのも、かなり珍しいことらしい。
なんだ、神殿のおじさんは記念撮影しがちなのか。
正確なところは分かっていないらしいが、スライム系が召喚されにくいのは、スライムという生物の生体構造に原因があると言われている。
スライムにはいわゆる脳と呼ばれるような機能を持った構造を有していない。
それが召喚されにくさに影響していると考えられている。
2回連続のレア魔物召喚で、凄いことなのだろうが、そうじゃない。
ショーマはそんなレアさは求めていない。
普通でいいのだ。
普通に、レオナールさんところのルイードみたいな魔物でいいのだ。
ということで、ショーマは気持ちを落ち着けるため、対女神精神攻撃(物理)で八つ当たりをする。
最近、この八つ当たりをすると、高確率で夢の中でクレームが来る。
まあ、返り討ちにするんだけど。
さて、気持ちも落ち着いたところで、改めて召喚されてきたモノを見る。
絶え間なくうにょうにょしている。
ショーマが動けばそれについて動く。
見た感じは液化した金属。
常温で液化している金属として、パッとショーマが思いつくのは水銀だ。
水銀は人体への毒性があるイメージが強い。
生物濃縮で人体に取り込まれて体に影響を及ぼしたり、揮発して吸引して中毒になったりしたはずだ。
「こいつの成分、水銀じゃないだろうな」
ショーマが新しく召喚されたモノと距離を取りながら様子を伺っていると、
「構成物に水銀は含まれていません」
と、聞き覚えのない声がした。
「ガル、今喋ったか?」
「いや、我ではない」
そいつであるぞ、とガルがいう。
そいつ。さっきからショーマの近くでうにょうにょしてる“そいつ”だ。
「お前、喋れるの?」
「肯定します」
ゲル状の体が変形して丸を作る。
体を自由に変形出来るのか。
話もできるみたいだし、見かけによらず器用な奴だ。
話ができるというのなら、まずは自己紹介が必要だ。
「俺はショーマ。よろしく」
「ショーマ。名前を認識しました」
今度はショーマが名前はあるのか訪ねてみると、
「開発コードはFU99-Dです」
開発コード?と、ショーマは首を傾げる。
「やっぱり生物ではないの?」
「生物ではありません」
心臓の形を作ってそれにバツを重ねている。
淡々とした言葉の返しをする割に、動きは非常にコミカルだ。
「FU99-Dだと長いから、エフユーでいいかな?」
「認識可能です。」
エフユーは人の手を形作って親指を立てた。
「見た目より面白そうな奴であるな」
「そうだね。上手くやっていけそうかな」
ガルの言葉に、ショーマも同意する。
ショーマは、取り敢えず立ち話もなんだから、ということで一旦宿屋に戻ることにした。
宿屋の部屋に腰を落ち着けてから、まずはガルの時と同様に、お互いの身の上話をすることにした。
先にショーマとガルが簡単な自己紹介をする。
それからエフユーの話に移った。
ただ、その冒頭は思いがけないものだった。
「ショーマは世界を救いました」
「⋯はい?」




